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【ハイキュー!!】青春飛翔論

第4章 変わらぬ景色、変わりゆく時【西谷夕】




「…いっぱいいたなー、ザリガニ!」
「あはは、久しぶりに楽しかった!」

私たちは色んなことを忘れて、ひたすらはしゃいでいた。
小学生に戻ったみたい。勉強もほとんどしないで、楽しいことばっかりしてたあの頃。
そういえば、あの時は私の方が少し背が大きかった。

「そういえば夕、最近また背伸びた?」
「お、分かるかー?」

今では夕の方が大きい。たった数センチの差ではあるけど。
けれど、夕の手足はあの頃よりも逞しくて、顔つきもすっかり変わった。

夕暮れの丘。
ここは小高い山になっていて、街が見える。昔は遊び疲れると、この芝生の斜面に寝っ転がってゴロゴロしていた。
今ではすこし景色が違って見える。それは街自体が変わってるのもあるけれど、多分見ている身長の高さもあるんだろうな、と地面に寝転がりながらおぼろげに考える。

暑いから、とお互いネクタイもセーターも脱いでワイシャツを腕まくりして。
隣を見ると、首のラインとか捲った腕とかにドギマギして、私は赤くなりかけている空に視線を戻した。

「…ここもすっかり変わったな」

懐かしげに夕が呟く。

「ここもだけど、私たちも変わったよ」
「そうだな。初めて来たのは小1のときだっけ」
「そうそう、夕が『ザリガニがすごいとこ見つけた!』って言って」
「だってあんだけの数いたんだぞ!世紀の発見だ!とか思ってたんだぜ」
「本当、あの頃から夕はバカだった」
「売られたケンカは買うぞ」
「ちょ、取っ組み合いのケンカはもう勘弁、もう夕に勝てるわけないでしょ!」

あははっと私は笑うけど、なぜか夕は黙ってしまう。
え、どうして?いつもの夕なら『それもそうだな!』って笑うところーー
焦って私は言葉を続けた。

「あ、あのさ!今日のお昼、あのあとずっと夕の話してたんだよ」
「俺の?なんだ?」
「夕って男らしくてかっこいいのにモテないよねって」
「これ喜んでいいやつか?」
「多分ダメでしょ」
「だよなぁ…」

はぁーっ…と夕は空に向かって大きく息を吐き出す。
そういえば夕は好きな人とかいるんだろうか。…あぁ、あの美人のマネージャーさん、潔子さんだっけ。同学年の田中と騒いでるのは日常茶飯事だ。
確かに彼女は綺麗な人だったなぁ、とぼんやり思い出す。
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