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【ハイキュー!!】青春飛翔論

第4章 変わらぬ景色、変わりゆく時【西谷夕】



結論が未だ出ないまま、お昼休みが来た。
いつもの女の子たちのグループで食べていると、

「おい、美咲!」

私よりも先に反応した友達の目線の先を振り向くと、やっぱりそこにいたのは、

「夕、昼練は?」
「これから。それより美咲、今日放課後ヒマか?」

放課後、というワードに嫌でも思い出してしまう。
相手は私が来るまで、裏門で待つんだろう。それを無視するのはさすがに酷いと思うけれど…
でも心のどこかで私は行けない理由を作りたくて。

「うん、ヒマだよ?」

つい、そう言ってしまった。
安堵と罪悪感。胸のあたりがホッとした反面、ヒヤリと冷える。
夕は私の答えを聞いて、どこか安心したような顔をすると、すぐクシャッと笑って、

「久しぶりに裏山行かねぇ?この時期ザリガニ釣れると思うんだ!」

すると、聞いていた女の子たちがプハッと笑い出した。

「の、ノヤ!ザリガニって!なにそれ!」
「小学生か!」
「うるせぇ!…な、美咲行くか?」

文句を言った後、夕のスッと優しげになった目を見て、私は不覚にもドキッとしてしまう。
そんな私に気付くはずもない女の子たちはヤイヤイと夕を冷やかした。

「デートのお誘いがザリガニってどうよ!」
「美咲〜行かなくていいよ!もうノヤって本当変なやつ〜!」
「お前らは絶対誘わねぇーから黙っとけ!」

照れ隠しに口調が荒くなるのが、なんだか可愛くて。
私も小さく吹き出して、

「…うん、行く。久しぶりに行こっか?」

と言った。
すると、ぱああっと夕は顔を綻ばせた。
女の子たちはまた笑い出して、

「美咲優しー!」
「ノヤは美咲に感謝しなきゃね!」
「ったくお前らはギャーギャーうるせぇな!美咲、放課後正門な!おし、昼練行ってくる!」
「うん、いってらっしゃい」

相変わらずめまぐるしい人だなぁ、と教室を出て行く小さくも大きな背中を見送る。
これで、裏門に行かない理由ができた。
手紙の送り主の彼を頭から追い出すように、私は頭を振った。
ごめん、と小さく呟いたのは誰に向けるでもなく、ただの自己満足。
弱虫の私はそれしか出来なかった。
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