第24章 学園不適合者【瀬見瑛太】
それにしても、と美咲はちらりと此方に目線をよこした。
「君は何度も同じ質問をするね。毎度違う答えを求めてるのかもしれないが、残念ながら理由はそれだけだ」
そしてこちらに向けられた目線は、すぐに文字の羅列された紙の上に落ちる。
「はいはいスミマセン、何度も聞いた俺が馬鹿でした」
「そうだな。君は人との関わりおいて、いくらか難点があるんじゃないか?」
「…そーですね、反省します」
お前が言うか、この社会不適合者が!
と内心暴言を吐くが、だからといってこの人間に嫌な感情はない。
ただ、少々人間らしくないというか、規格外なのだ。
常日頃から授業そっちのけで図書室に入り浸り、人との交流を最低限を超えて持たず、独自の思考回路をその頭脳に構成する。
彼女の思考回路というのは、凡人という言葉には到底収まらないようなものだった。
所謂、天才だ。
「…お前は、なんでここにいるんだ?」
「本を読みたいから、という以外に理由があると思うのか?」
彼女の周りには無造作に積み上げられた、本、本、そして本。
それは洋書だったり、歴史書だったり、物語だったり、論文だったり。はたまた図鑑もその塊のパーツとなっている。
膨大な情報量。それを彼女は目から吸収し、その全てを脳に貯蓄する。
その情報は彼女にありとあらゆる疑問を問いかけ、解決の道を示し、新たなる世界へと導く。
彼女は天才だ。その天才が、なぜ高校生という枠に律儀にも収まっているのか。