第19章 グレーの生地【黒尾鉄朗】
「…今日も部活?」
「ああ、そうだ」
「今日もいっぱいスパイク打ってきたんだ」
「そ」
ちらりと視線を雑誌から移すと、美咲は同じ体勢に疲れたのか、仰向けになって新しい巻を読み始めていた。
グレーの布が重力に負けて、身体のラインをなぞる。嫌でも膨らんだ胸だとか、細いウエストだとかが目に入る。
目の毒だ。
半ば理性が効果を薄めてきてはいるが、一応声はかけてみる。
「あのお嬢さん」
「…クロ?」
「そんな無防備でいると襲われても文句言えませんよ?」
すると、美咲はむっくりと起き上がって、あぐらをかく。
思った以上にパーカーのジッパーが下がっていて、中にキャミソールのようなものを着てはいても、白い胸元にムラっとしたものが渦巻く。軽く拷問か、これは。
美咲と研磨と俺は小さい頃からの幼馴染だ。
まぁそれで、異性の幼馴染に恋だとかはよくある話なわけで。
俺もそういうことだ。だからこの状況はなかなかにキツイものがある。
「…年上しか興味がないクロに言われても説得力ない」
「は?」
おっと。結構デカイ爆弾を落とされた。
「…濡れ衣だな。俺は別に熟女好きなわけじゃない」
「1人目の彼女、2歳上。2人目、1歳上。3人目…」
「あーあーあーもう分かった!てかなんで全部把握してんだよ?」
確かに歴代彼女は年上ばっかりだが。
でも美咲に会わせたことなんかないし、1人目は学年的に知らないはずだし、2人目に関しては他校だから、把握されてることに焦る。