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第36章 chapter6 ④遠いあのとき


無言で先ほどのように両手を広げ、"私"が私を抱き締めてきた。
けれど不思議なことに何の感触もなく、肌や布の擦れる音すら聞こえない。
『……?。』
"私"は何も喋らない。こんなことをしてくる意図も分からない。しかし何かしら意味はあるはずだ。
戸惑いつつ、私も"私"を抱き締め返す。
『(これで……いいのかな……)。』
自分と抱き合うなんて変だ。目的は何なんだろう?。
考えながら相手の反応を窺っていると、ふとある日の記憶を思い出した。
未来機関の支部で、保護された希望ヶ峰学園の生き残りの生徒達を苗木くんたちと確認した日のことだ。
『(あれ……何で今、こんな記憶なんて……)。』
絶望の残党をどうするか第78期生のみんなで話し合った日のこと。船でジャバウォック島まで移送した日のこと。人類史上最大最悪の絶望的事件から逃れるために希望ヶ峰学園の旧校舎にみんなで立て籠った日のこと。もぬけの殻になった職員棟の例の部屋を見た日のこと。予備学科のありきたりなデザインのシンプルな黒いスーツ。不健康そうな青白い肌。上がりも下がりもしない口角。黒くて長い髪の毛。真っ赤な両の目。
様々な記憶がフラッシュバックしていく。
頭に無理やり流し込まれているかのような感覚に吐き気を覚えた。
――イズルくん、君にまた会えるなんて!。
――怪我はない?。とにかく、無事でよかった。
――あ、苗木くん!。この人はね、私の……
いつか発した自身の言葉が脳裏を駆け巡る。
未来機関に取り除かれていたであろう記憶が、海馬体を侵食するように思い出の空白を塗り潰していく。
自分の意思とは無関係に流れてくる頭の中の景色や会話が、全て同時に再生されているみたいに乱雑に混ざり合っていく。
『う……うぅ……。』
頭を抱えて瞼を閉じてもそれは止まることなく、ただ受け入れるしかなかった。
――希望更正プログラム、絶対成功させようね。
――え、イズルくんのことで話がある?。
――ねぇ……元の人格って何?。一体誰の話してるの?。
――イズルくんは、イズルくんのままなんだよね……?。
濁流のような記憶に混乱しつつ、しかし確かに自分の体験であると心のどこかで納得していた。
記憶と一緒に感情まで呼び起こされている。
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