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第36章 chapter6 ④遠いあのとき


相変わらず簡素な部屋だ。
シンプルなソファや普通のダイニングテーブル、質素な本棚などが適当に置かれているだけの部屋。
こんな所にずっと居たら飽きてしまうだろう。窓から見える景色だって木の枝葉で隠れてしまっているし、何の面白味もない部屋だ。
「出来るだけ窓の近くに居てください。あなたは鈍臭いので、場所によっては逃がすのが困難です」
『はーい。』
もし職員に見つかったら大変なことになるのを分かっているから素直にカーテンと窓の間に立った。
イズルくんの察しはすごく良いから今まで見つかりそうになったことはないけれど、万が一というものがある。大人しく従うのが吉だ。
『イズルくんもおいで。』
フワッとカーテンを引っ張って広げ、イズルくんを私と同じ空間に招き入れる。
イズルくんは「狭いです」と少し迷惑そうな素振りで言ったけど、出て行きはしなかった。
『あはは、わりと居心地いいね。なんだか楽しくなってきちゃった。』
ちょっとやそっとの風では靡かない重たく厚い生地のカーテンだ。
その陰に隠れるように2人で立っている状況が、なぜか分からないけど嬉しく感じた。まるで秘密基地みたいだ。
「……意味がわかりません」
『ふふっ。小さい頃とかに脚立に布をかけて小さなテントを作ったり、大きなダンボールに窓を切り出したりして中に籠ったことはない?。なんだか、それみたいだなぁって。』
「さあ……少なくとも僕はありません」
イズルくんはどこか呆れたように溜め息を吐いて、窓の外に目を向ける。
「あなたはどうしてこの部屋に来たがるんですか? 外の方が広いでしょう。あなたが楽しいと思えることも山ほどあるでしょう。なのに、何故こうまでしてあなたは来るんですか?」
イズルくんの視線の先を眺めた。
職員棟の裏に植えられている木々のせいで景色はほぼ見えないけれど、その先には確かに都会としか言いようがない景色が広がっている。
そりゃもう、当然この部屋よりももっとずっと沢山の娯楽で溢れ返っているだろう。
わざわざ放課後や授業中の暇潰しになるような部屋ではない。
だけどね、違うんだ。
そうじゃないんだよ。イズルくん。
『……イズルくんは分かってないなぁ。本当に超高校級の希望なの?。』
私がここに来る理由なんて、いつも言ってるじゃん。
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