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第36章 chapter6 ④遠いあのとき


おかしい。
私は被験者のみんなと違って絶望に堕ちてないから、記憶を取り除く必要なんてなかったはず。
ここに私の記憶は保管されてなんかない。
視線が強制的に建物を見つめる。あれは職員棟だ。
足はそのまま職員棟へ向かっていく。
『(何だ……?。親しみのある風景なのに、ここから先が分からない。何のために職員棟なんて……)。』
職員棟は一般的に生徒の立ち入りを禁止している。
そんなところに向かう必要などないし、そもそも在学中は職員棟に近寄ったことすらない。
中庭を完全に抜け、職員棟の裏手へ回る。
職員棟の裏には背の高い樹木が多く植わっていた。おそらく塀の代わりの目隠しだろう。
敷地外との境に鉄格子のようなフェンスはあるけれど、この木々も横並びになっていて窓を覆うような配置だ。
壁と樹木の距離は1メートル程しかない。
何か見られたくないものでもあったんだろうか。
勝手に動く体のなすがままにそんなことを考えていると、ようやく立ち止まった。
木に何かしている……?。
『今日も居るといいなぁ。』
持参してきたものがあった。自身の身長より高い木製の工作物。
それを木に沿うように立て掛けて、ヒンジを一段ずつ開いていく。
踏み板を木の幹に巻き付くように展開させ、すぐに設置が完了した。
『よし……枝が邪魔だけど、いい感じ。』
折り畳みの階段だ。どこかの国の教会にあるらしい某奇跡の螺旋階段を参考に、支柱のない木造階段をクラフトワークの延長で自作した。
本物とは違って色々と金具を多用してるけど……。しかも「支柱がない」ってところも庭木を支柱代わりにするから本体に支柱がないってだけだけど……。
後ろめたさを感じながら上っていくと、目指している部屋の窓から誰かがこっちを見下ろしているのが見えた。
一瞬、身を凍りつかせる。
スーツ姿の男だ。よくよく見てみると、その人は馴染みのある相手だった。
『イズルくん……!。』
無意識に声が弾む。
黒くて長い髪。真っ赤な瞳。
何の感情もない表情でガラス越しにこちらを見つめている。
「あなたが今日この時間にここに来るのを僕は既に勘づいていましたよ」とばかりに腕組みをして立っている。
階段を2階の窓の高さまで上りきり、少し疲れた体で木に寄りかかった。
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