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第36章 chapter6 ④遠いあのとき


滲み出た涙を拭ったが、目の前にある視界はぼやけたままだった。この記憶の持ち主もまた泣いているのだろう。
そう察する頃には映像は消え失せてしまっていた。
なんということだ。
現実の"七海千秋"はもうこの世にいないらしい。
『(でも……あれは誰だったんだろう?)。』
男特有の大きな手と、黒いスーツの袖だけしか見えなかった。
彼女の死を見届けた彼は、確かにプログラムの参加者であるはずだ。
『(そういえば……1人足りない気がする)。』
誰なのかを考えているうちにまた違和感が増えた。
誰かを見ていない。全員いた気がするけど、でも確実に誰かはいなかった。
被験者の顔を1人ずつ思い出していくと、やっとそれが誰なのか判明した。
『そうだ、日向くんだ……!。』
日向くんだけはどの記憶にも見当たらなかった。
まだ偶然日向くんの姿が映っている記憶が現れてないだけかもしれないけど、概ね日向くんは予備学科だったからクラスの人たちとは関わりがなかったってことだろう。
だからといって現実の千秋ちゃんの記憶が日向くんのものだとも、そうでないとも言い切れないけど。
日向くんは十分な判断材料にはならなかった。
『まぁ……誰でもいいか。分かったところでって感じだし……。』
残念な出来事だったのは間違いないが、大切なのは過去よりも未来だ。
意図的に消された記憶を詮索しても仕方がないだろう。
少し気落ちしつつ、また歩き続けることにした。
格子の張った白い床を少し眩しく思いながらも見つめる。
前を見て歩いていたらまた凄惨な誰かの記憶が目に入ってしまう気がして恐かった。
このまま下を向いて歩いてても何も改善はないだろう。それは分かっているけど、どうにも顔が上がらなかった。
『早く……みんなのところに戻りたい……。』
こんな場所で過去のみんなの記憶を見るんじゃなくて、今のみんなの手助けがしたい。しなければならない。
それが私に与えられた仕事だし、みんなを無事に元の世界に出してあげたいと思う気持ちは私自身の意思であり願いだ。
そのはずだ。
だから早くここから出なければ。みんなの所に行かなければ。
でも、ただ1つ気になる。
『(望んでここに来た……?)』
先ほどモノクマに言われた言葉がずっと引っ掛かっている。
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