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第31章 chapter5 ④おさらい
狛枝くんの自傷を止めるために出たわけだから、私に気を取られて右手が動かなかったのは結果オーライだ。
よかった……そう思った瞬間、金属の素早く擦れる音と共に目の前に槍が落ちてくるのを見た。これが落ちきった後の光景を知っている。
『ーーーッ!!。』
声にならない叫びが胃液のような勢いで喉の奥から込み上がった。
とっさに腕で弾いて穂先の軌道を反らせられたからいいものの、このプログラム始まってから今までで1番肝が冷えた。
『はぁ……間に合った!。』
槍の先端は床のコンクリートを滑って倒れ、束の部分は狛枝くんの腹の上に落ちた。足元から短い呻き声が聴こえる。
というか何でこのタイミングで槍が降ってきたんだ?。怪訝そうに狛枝くんを見ると表情は少しポカンとしていて、握り込んでいたはずの左手は若干開かれている。
驚いて手を放しちゃったのか。まぁ、これは……私のせいだな。
「…………」
狛枝くんが見上げてくる。私が邪魔しにくるのは予想していただろうにこの突入はまったくの予想外だったらしい。裏をかいたつもりでも結局は以前と同じトリックになってしまったのが私にとっては幸いだった。
『狛枝くん。君が無事でよかったよ。』
腹の上から槍を拾い上げ、穂先を狛枝くんに向ける。
『さぁ、それを離して。』
脅しをかけつつ、右手のナイフを手離すように指示する。槍とナイフを交互に見て、狛枝くんは溜め息を吐いてから手に持ったナイフを床に落とした。
それを確認してから、しゃがんで口元のガムテープを剥がす。
「………あーあ、負けちゃった。キミには敵わないなぁ」
諦めながら大の字で寝転がる狛枝くんを横目に、ナイフを槍で遠ざける。
「ねぇ、希灯サン。どうしてキミはそうまでして必死にコロシアイを食い止めようとするのかな?」
『どうしてって……コロシアイだからだよ。』
誰かが死ぬところなんて見たくない。
それに犠牲を許容してしまえば与えられた仕事を放棄したことになる。もう本来の更正プログラムとはひどく掛け離れてしまっているけれど、被験者の監視及び保全を行う責務は変わらず私のものだ。
『誰も死なせずに帰すって決めてるんだ。』
「たとえそれが絶望だったとしても?」
狛枝くんが真顔でそう問い掛けてくる。自分たちの過去を許せなくて仕方がないみたい。
『うん……そのために私はここにいるし、君達もここに居させられてる。』