第23章 【R18】6/10岩泉一HB 〜君が望むなら〜
掌にあの時みたいなドアノブの冷たさが蘇るような気がした。
『おいかわく、、、あ!、、んっ、、、はぁ、、、はぁ、、、』
「久しぶりの及川さんのそんなにいいの?ぎゅうぎゅう締め付けちゃってさっ。」
『ん、、あ!、、、おいかわくんの、、きもちい、、!あ、、んっ、、』
言わずもがな、俺は綾瀬が好きだ。
あの日の部室での出来事よりも前から。
及川を目当てでバレー部のマネージャーになる女は正直腐る程いた。でも綾瀬は大人しくて、いつも仕事を黙々とこなすタイプだと俺は思っていて、そういうバレーに対して誠実な姿勢とか、周りに気を使えるところに俺は惹かれていた。
しかしそれは、全て俺の勘違いだったのだろう。
壁越しに聞こえる声は俺の存在には気づいていないようで、俺の想っている彼女からは程遠い、甘ったるい喘ぎ声を肌がぶつかる乾いた音に合わせて、漏らしていた。
「ほら、右足上げて?、、、もっとよくしてあげる。」
『ん、、、おいかわく、、、誰か来たら、どうしよ、、、。」
「だいじょーぶだよ、、店の中もうるさいし、、、。みんな酔っ払ってるしね。、、、あ、すごい、太ももまで垂れちゃってる、、、」
おそらく、この二人は付き合っていないんだと思う。今も、あの時もだ。及川は彼女が出来る度に、ちくいち俺に報告して自慢してくるが、それをしてこないという事は、後ろめたさがあるという事で。二人は所謂セックスフレンドというやつなんだろうと、俺は二人の会話からそう感じ取った。
でも綾瀬の性格を考えれば、恐らく本気で及川を思っているのかもしれない。きっと、綾瀬と及川の間にも超える事のできない壁があるのだと思うと、俺は心臓を握りつぶされそうなくらい苦しくて、どうしようもない気持ちに押しつぶされそうな気分になった。