第5章 WC予選
美しく成長した夏美に気持ちが舞い上がって勢いで告白したものの、やっぱり振られてしまい、火神は今このどうしようもない気持ちの行き場に困りながら帰路についた。
(わかってたとはいえ、やっぱりこうはっきり言われると泣きたくなる…。)
誰かが一緒にいれば気持ちを吐き出せるけど、今は1人だから余計悶々としながら帰らなければならないと思うと虚しくなっていた。
そんな中後ろから肩を叩かれて火神は後ろを振り向く。
「よぉ!火神じゃん!奇遇だなー、こんなとこで会うなんて!」
「高尾!?お前こそこんなとこで何してんだよ!?」
「何ってランニングだけど?」
確かに高尾の格好を見るとランニングをしてると思わせるものだった。そして高尾はミラクル過ぎるこの状況に吹き出しそうになり口元を手で押さえながら、いきなり本題を振る。
「あーマジウケる!いやー見ちゃいましたよ、一部始終を!」
高尾にそう言われて火神はハッとして、声を荒げる。
「ちょっ!覗いてんじゃねーぞ、趣味わりいな!」
声を荒げる火神に高尾は態度を変えずにいつもの調子で喋る。
「ここは俺のランニングコースなの!夏美ちゃん家で告白したのは失敗だったな。」
告白という言葉を聞いて火神は高尾が話まで聞いてたことまでわかり、思わず赤面する。
「全部聞いてたのかよ!?鷹の目どんだけ!?しかも夏美の家知ってんの!?」
鬼気迫りながら質問攻めをする火神に高尾は若干引き気味になりながらも丁寧に答えた。
「ちょっと!落ち着けって!鷹の目なんか使ってねーよ。そこの十字路の電柱に隠れて見ちゃった!」
高尾が指を指して教えると、火神は指し示した場所が意外と近いことがわかって、また赤面してこっぱずかしくなる。
そして高尾は火神を挑発するように、語尾にハートマークがつくくらいに調子のよい口調で残っている質問に答える。
「あと、なんで家知ってんのかってーと、俺と夏美ちゃん、この前デートした仲だからな!!」