第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
「ねぇ、カズ君。なんだか初めて出会った時みたいだね。」
落ち着いたところで、夏美は微笑みを向けてくれ、俺も後ろを振り向き自然と笑顔になる。
「ああ、そうだな。強引にお姫様抱っこしてたっけ。」
「そうそう!あたしはいいって言ってるのにカズ君たら全然聞いてくれなくてさ。」
ああ、そうだったな。
チャリ同士でぶつかって夏美を怪我させちまったもんな。
それで必死で手当てして、抱えて、リアカーに乗せて引いてたっけ。
で、秀徳に着いて夏美の顔をマジマジと見て一目惚れしたんだ。俺はもっと夏美と触れ合いたくて、いやいや言うこいつをまた抱えたもんな。
「だってお前があんまり可愛かったからキッカケを作りたかったんだよ。」
「ふふ、でもあの時ぶつかったのがカズ君でよかったな…。」
そう言って夏美は俺の首に手を回し、頬を擦り付けてきた。
「おいおい、くすぐってえよ。」
「だってカズ君が大好きなんだよ。」
秀徳男子全員のアイドルの夏美がこうして俺にだけ甘えてくれる。
もう、可愛すぎてこいつは一体どこまで俺を骨抜きにすんだよ。
「俺だって負けねえくらい、夏美が大好きだぜ。」
俺は夏美の耳元に囁くと彼女は頬を放して、俺を愛おしそうに見つめはにかんだ。
「…もう私達、バカップル決定だね。」
「いーんだよ!そしたらお前に悪い虫つかなくなんだろ?」
「けど、カズ君浮気したら許さないからね!それでなくてもモテるんだから。」
夏美が頬を膨らませ俺に釘を刺す。そして一旦彼女を下ろして正面を向き合った。
「ばーか。お前以外の女なんかもう興味ねーよ。安心しろ。」
「カズ君…。嬉しい!!」
夏美は勢いよく俺の胸元に飛び込み、俺も抱きしめ返す。
そして、俺達はまた唇を重ね合わせ、上唇を啄ばみ、甘く蕩けるキスをした。
もう、絶対離さねえ。他の誰にも渡さない。
やっと捕まえた、愛しい夏美だから。
ーー決勝は苦戦するもゾーンとやらに全員入って、辛くも勝利し、有終の美を飾った。
おしまい。