第5章 WC予選
「私も行きたいってごねたけど、陽泉だと寮生活になっちゃうから私はお兄ちゃんやパパやママに反対されちゃって泣く泣く諦めたの。実際、マネージャーだったらどこの学校でもできるしね。それで、家から近くてバスケも強くて進学校の秀徳にいるってわけよ。」
「ふーん、なるほどな。」
大我は納得したみたいで、まだ残っていたハンバーガーを食べる。私はもう食べ終わっていたので大我が食べ終わるを待っていた。
大我が完食して少し休憩したらお互いに片付けて店を出る。
「夏美、もうすぐ暗くなるし家まで送ってくぜ。」
「え!いいってば!あたしん家と大我ん家反対でしょう?」
全力で遠慮する私に大我は表情と態度を変えずに真剣な眼差しを向けた。
「さっきみたいにナンパ野郎がまた出たら困るだろ?」
「いやあんなしつこいのは滅多にいないよ。私は大丈夫!大我の方が試合で疲れてるんだから早くお家に帰らないと。」
気遣う私に構わず、大我は突然私の両肩を掴んで顔を近付け、元々低い声をさらに低くして囁いてきた。
「なんだかんだいって強がりだよな。いーから俺に送られてろ。」
ずっと弟分だと思ってた大我にそんなことをされて、私は内心ドキっとした。だけど、平静を装って茶化す。
「いきなりどうしたの?いつもの大我らしくないよ?」
そんな私にまた大我はばつが悪そうな顔をして両手を離し、そっぽを向く。
「いーから行くぞ!」
「あー待ってよ!」
先に歩き出した大我を追うため私は小走りをした。
ーー私の家の最寄り駅まで着き、ここまでいいと言った。けど大我は断固として家まで送るといって聞かなかったので結局送ってもらうことにした。
しばらく黙って歩き私の家まで着いたところで、大我が唐突に話を振ってきた。
「夏美、今好きな男いるか?辰也以外で。」
あまりにも唐突だから私は吹き出しそうになり咳き込んだ。
「…けほけほ。ちょっとびっくりさせないで!なんか今日の大我変だよ?オーバーワークしておかしくなっちゃった?」