第5章 WC予選
「何だよ、今いいところなんだからあっち行ってろよって、なっ!?」
私の正面の男がそう言いながら大我の方へ振り向くと、体格の良さとオーラに目が点になる。そして大我は彼の私の腕を掴んでる腕を掴んで凄みのある顔で睨みつける。
「それはこっちのセリフだよ…!!さっさと消えやがれ!!」
それでやっと男達は引き下がり捨て台詞を吐いて何処かへ行った。ひと息ついて頭をぽりぽりとかく大我に、恐怖から解放された安心感と喜びで思わず抱きつく。
「たく、いっちょまえにナンパされてんなよって、うぉっ!!」
「うぅ…。大我ー!!怖かったよー!!」
お昼の時のように大我は赤面し、また同じ事を言う。
もう、ここは頭を撫でてよしよしってするとこでしよ〜。女の子の扱い、相変わらずわかってないなー。
私は少々呆れるけど折角助けてもらったのに、喧嘩の元になっちゃうから黙っておいた。
「ここだと目立つから、やめろって!」
「別にいいでしょ!助けてくれてありがとうね。」
大我を見上げてお礼を言うと大我は人差し指で頬をぽりぽりとかく。
「礼なんていいよ。それよりもう行くか。」
私は大我を離して体育館を後にしようとすると、大我は重くて床に置いてあった救急箱を持ってくれた。
「ちょっと大我、いいってば。重いでしょ?」
「いいってこれぐらい。俺の方が力あんだから。ほら、行くぜ。」
そう言って彼は一歩先に歩き出す。私は大きく逞しくなった背中を微笑ましく思い、顔が緩んでいた。立ち止まっている私を疑問に思ったのか、後ろを振り向く。
「おい、どうしたんだよ。なにニヤついてんだ?」
怪訝そうな顔をする大我に私ははにかみながら彼を褒める。
「ううん。随分男らしくなったなぁって。それより荷物ありがとね。」
大我はまた赤面して、早く行くよう促した。