第5章 WC予選
夏美ちゃんは頬をほんのりと赤らめて、無邪気な子供のように笑う。さっきの真面目な顔と比べるとギャップを感じ、目が離せなくて、俺もちょいと顔が赤くなって見惚れてしまった。
どうして、お前はそんなにかっわいいんだよ!?俺をドキドキ死させる気!?
「やだな、高尾君。私は心から思ってる事を言ってるだけだよ。」
そんな控えめな所も本当に可愛くてたまらんわ〜!
俺は一気に胸の鼓動が高まり、自分を落ち着かせるために真ちゃんに話を振る。
「それって意外とできないことだよな?な、真ちゃん?」
真ちゃんはいつものように眼鏡を押し上げて鼻で笑う。まあ、素直じゃないのは相変わらずだし、慣れてるし、あえて話振ったんだけどね!
俺は人差し指で真ちゃんを差して、いたずらっ子のようにニヤニヤとしながら小馬鹿にする。
「ここにいい例がいるだろ?もーちょい、素直になってくれるとありがたいんだけどなー!」
夏美ちゃんはぷっと吹き出して腹を抱えて大笑いする。
「ぶ!あははは!そうだね!真ちゃんはもうちょっと素直になった方がいいかもね!」
「だろ?真ちゃん、これからはツンよりデレを増やさないとな!!あははは、はは、ひー!!」
俺も一緒になって大笑いし、真ちゃんを茶化す。当然真ちゃんは怒声を上げる。
「お前ら、いい加減にするのだよ!余計なお世話だ!!さっさと帰るぞ!!」
しばらく笑いが止まらない俺達に真ちゃんは結構呆れてて、しまいには置いて行こうとする。俺は急いで真ちゃんを引き止めて、夏美ちゃんも一緒に帰ろうと誘う。だけど、しょんぼりとした顔をして彼女は言う。
「ごめんね、2人とも。あたし、これから約束あるから先に帰ってて!じゃあね!」
重い救急箱をさっと持って夏美ちゃんは踵を返して素早く控え室を後にした。俺がしばらく呆然としていると真ちゃんが、俺のジャージの首根っこを掴んで無理矢理引っ張って強制連行した。