第5章 WC予選
ーSide 高尾ー
試合開始前から夏美ちゃんの様子がおかしくて俺は心配で声をかけた。
「どったの?夏美ちゃん?浮かない顔しちゃって。お前が元気じゃないと調子狂うぜ。」
夏美ちゃんは意表を突かれたみたいに大袈裟に反応した。
「やだな!私は大丈夫だよ!それより頑張ってね!!」
なんか違和感を感じるけど、もう試合が始まるから深く考えるのはやめて、ニコッと笑って夏美ちゃんにハイタッチをする。
「おうよ!絶対勝つからな!」
実は気付かれないように夏美ちゃんの顔を横目で見て確認したけど、やっぱり浮かない顔をしていた。
それからウチのベンチの近くを通るたびに鷹の目で夏美ちゃんの事を確認していた。無心で試合を見てるのか、体調が悪いのか全くわからない。
一体どうしたんだよ?夏美ちゃん。いつもはめちゃくちゃ応援してくれるのに。
だけど試合に集中しなければならないから考えるのは後にした。
第4クオーター当たりで夏美ちゃんが火神の事をチラ見したのを俺は鷹の目で見逃さなかった。それで俺はつかなければよかった検討がついてしまう。
もしかして、火神いやむしろ誠凛の心配してんのか!?一体何でだよ!?いや待てよ…。
疲れ切った火神がストレッチをして真ちゃんを睨んだ時に俺は首の後ろをかいて黒子に気さくに話しかけて、睨む。
「おーいいねー、やっぱアツいぜアイツ。こりゃこっちも負けてらんねーわ。」
正直まだカラクリはわかんねえ…それでも。
「しがみついてでも止めてやる。」
黒子はポーカーフェースで言い放つ。
「そう簡単に破られては…困ります。」
夏美ちゃん、検討違いだったら悪りいけど、もし兄貴さんの事を考えてるってんならそりゃ筋違いだぜ。
兄貴さんの事大好きでお前が優しいのはわかる。火神に勝ってほしいとか思ってんのかもしんねーけど、今お前は秀徳のマネで敵同士だ。
だから俺達だけを今は見てほしいんだ。私情を捨てろ。
ってこれで違ってたら夏美ちゃんに申し訳ないから言えないけどな。
俺は外れてほしいと思いながら、そして第4クオーターが開始された。