第5章 WC予選
それから両者一歩も引かず、一進一退を繰り返す。残り26秒で大坪先輩が決めて104-103と秀徳がリードしたけど、まだ油断はできなかった。
大我もだけど誠凛の人達は皆負けず嫌いだ。それはどこのチームも同じだけど。
そこから誠凛の攻撃に入り、5番から木村先輩がスティールしたけど、黒子君がジャンプをしてなんとかキャッチをする。
高尾君がディフェンスに入るけど、黒子君はまたあのドライブで抜けてセンターの木吉さんにパスを回す。
木吉さんのシュートを真ちゃんがブロックしようとすると、彼の後出しの権利により、ファウルを取られフリースローツーショットを指示された。この時残り2秒だった。
全く先が読めない状況で私は無心になっていた。
ペイントエリアに立つメンバーがそれぞれ決まり、運命の1投目が放たれる。綺麗に決まり同点になる。
そして笑っても泣いてもこれが最後の2投目だ。
私はこの時外れろと正直に祈る事ができず、ただただ見守っていた。もう、今迄の色んなことが錯綜して心の中がグチャグチャで仕方が無い。
もどかしくて、早く終わって欲しいと思ってるせいか時間がとても長く感じる。
木吉さんの心の準備ができたようで、2投目が放たれる。
そして外れて、両者譲らずリバウンドを取りにいく。大坪先輩が取ると思った矢先に大我が後ろから片手で取る。それを真ちゃんがブロックする。
2人の押し込み合いで2秒はすぐ過ぎて、試合は引き分けで終了した。
私はやっと緊張から解放されたことでほっと溜息をつき、胸を撫で下ろす。そして皮肉にも自分が望んだ結果が実現して正直どんな顔をしたらいいのかわからなかった。
だけど、両者とも引けを取らずスリルのあったいい試合だったのは確かだ。
スタメンの表情を見ると皆煮え切らない感じが伝わってくる。
両チーム整列し挨拶を終えて、秀徳と誠凛の2度目の激突が幕を閉じた。