第5章 WC予選
第4クオーターが始まるまでの短い休憩で大我の様子をチラッと横目で見る。
やっぱり、相当疲れてる…。ずっと真ちゃんに付きっ切りだもんね。
とは思ったものの、実はそこまで心配していない。なぜなら大我は追い詰められた時ほど力を発揮するから。そしてお兄ちゃん譲りの負けず嫌いだ。
秀徳のメンバーは皆、黒子君のドライブに心底驚いていた。だけど宮地先輩は冷静に、
「火神はもう限界だ。緑間のシュート撃ち放題だぜ。」
と言うと、私は訂正しようと言いかけたところで真ちゃんが代わりにまるで打ち合わせしたように私の言いたい事を言った。
「いや…それはないのだよ。ヤツはそんなヤワではない。」
ほら、やっぱり。昔と変わってないね、大我!
私は安心すると少し口元が緩む。いつもなら高尾君だけど彼は黒子君のそばにいて少し遠かったので、そこを真ちゃんに突っ込まれた。
「おい、氷室。なにニヤついているのだよ、それと何か言いかけてなかったか?」
「いやね、あたしも真ちゃんと同じ事言おうとしたの。大我が昔と変わってないみたいで安心したからつい。」
真ちゃんはいつもの癖で眼鏡を押し上げて、少し考えている。そして思い出したように言った。
「なるほどな。そういえば、高尾から聞いたのだよ。火神と知り合いなのは。」
私は真ちゃん達に言ったというより、自分に言い聞かせるように無理矢理笑顔を作ってエールを送る。
「そう!大我は強くなったけど、真ちゃん達も十分強いからね!絶対勝てるよ!」
真ちゃんはふっと口角を上げて、オーラに凄みが増した。
「ふん、当然なのだよ。もう負けるのは、ごめんだからな。」
そんな真ちゃんを見て私は第1クオーター開始前のように圧倒される。そしてまた罪悪感で胸が締め付けられた。
(私がもし、引き分けでいいって思ってた事が知られたら高尾君や真ちゃん、先輩達一体どんな顔するんだろう…。)
また微妙な気持ちを抱えてきっと浮かない顔をしてるだろうと思いながら、第4クオーターが幕を開ける。