第5章 WC予選
私がなぜ誠凛の心配をここまでするのかというと、次の試合は霧崎第1だからだ。秀徳との試合で2軍を投入してきたので、もちろんウチが大差で勝った。
1軍は何をしていたかというと、何と誠凛と泉真館の試合を見て研究していたのだ。私には何故かわからなかったけど、とにかくウチとの試合は捨てていた事はイヤでも理解できた。
真ちゃんも言ってたけど、本当に人事の尽くしていない反吐が出る試合だった。だけど誠凛との試合では必ず1軍で、死に物狂いで向かってくるだろう。
DVDみた時もラフプレーが酷く、しかも審判に気付かれないようにやっていたから嫌だった。ストバスは柄の悪いチームだと良くあることだったけど、公式戦で使いまくるのはやっぱり卑怯だ。
誠凛はそこまで弱くない、いやむしろ強いけど、ウチみたいに選手層が厚くないから何かあった時に脆い。それで心配をしてしまった。
そして今回は時間短縮の為に引き分けが採用されている。選手達にとっては不服かもしれないけど、私は違った。
秀徳と誠凛、どっちもウィンターカップに出場して欲しくて、出来れば引き分けになってほしいと思ってたから……。
複雑な思いをしていた時、何故か近くにいた高尾君に目があったわけでもないのに見られた気がした。だけどそこまで考える余裕が私にはなかった。
第2クオーターは誠凛リードでインターバルに入る。
私はせっせとドリンクやタオルをスタメンに渡して、監督の話をぼーっと聞いていた。
「後半は必ず点の取り合いになる。絶対に走り負けるな!」
スタメンと控え選手が全員一気に返事をした後、それぞれ休憩に入る。練習試合だと高尾君や真ちゃんと絡む事が多いけど、彼らの疲れ具合を見るとそうもいかなかったのでそっとしておく。