第5章 WC予選
ーSide 夏美ー
両チーム整列の前に真ちゃんは大我と睨み合い、高尾君はっと…。
え!?誰もいない?どういうこと?
高尾君幻覚でも見てんの?
私は誰かと話している様に見える高尾君を不思議に思い、控え選手の先輩に尋ねた。
先輩の話によるとその影の薄い子こそ誠凛の11番、黒子テツヤ君らしい。
彼の事は研究の為にDVDを見て名前やプレイスタイルを知ってはいたものの、実際見ると本当に影が薄すぎて全然認識ができなかった。
その黒子君があの真ちゃんを変えたのかと思うと疑問がどんどん湧いてくる。そして高尾君も彼をライバルとして見ていることにも。
やっぱ試合を見ないとわからないな、本当に彼がすごい人なのかどうか。
秀徳メンバーが目をギラギラとさせている中、私は不謹慎にも内心はワクワクしていた。
そして両チーム整列し挨拶をして、ジャンプボールが放たれる。ジャンプボールを制したのは誠凛だったけど、高尾君が誠凛の5番からスティールをして、秀徳が先制を取ると誰もが思っていた。
スティールしたボールが木村先輩に渡りゴールに近い宮地先輩にロングパスしようとする瞬間、速すぎてボールが勝手にバックしたように見えた。
一体何がどうなったのか困惑した私だけど、黒子君が何処にも見当たらないのに気付き、何が起こったのか理解した。そう、黒子君がスティールをしていたのだ。
それだけでも驚きだけど、一体いつからそこにいたの?フィジカルは高そうに到底見えない。まさか!読んでたっていうの…?
私は初めて目の当たりにする彼のプレーに目と口が乾きそうなくらい開きっぱなしだった。同時に真ちゃんと高尾君が警戒している理由、ましてや監督までもがDVDを虎視眈々と見て研究をしまくっていた理由をやっと理解できた。