第5章 WC予選
待ちに待ったWC予選がついに始まる。1日が過ぎるのは本当に早くて、秀徳、誠凛共に東京の上位4校まで勝ち進む。
今日は午後に誠凛との試合がある。朝から両チームともそれぞれ闘志を募らせていた。特に秀徳は夏の雪辱を絶対に晴らしたいと本気でかかるつもりだ。
だが電車移動中に1人だけはしゃぎ出した者がいた。
そう、夏美だ。今日は生憎平日でちょうど通勤通学ラッシュにあたり、秀徳メンバーは闘志の他にイライラも募らせた。
しかし夏美はアメリカならあり得なかった人混みに目を輝かせて、写メまで撮っている。
「Ohhh! Is this a Japanese rush hour!? Many people are jam-packed! It's indeed as amazing as everyone said it was!
(うわー!これが日本のラッシュなの!?人がぎゅうぎゅう詰め!本当に噂通り、すごいわね!)」
初めてみたある意味の感動で夏美がつい英語で喋ってる様子に、秀徳メンバーは彼女の発音の良さと流暢さもあいまってしばらく呆気に取られた。
そしてあまりの彼女の無邪気さに秀徳メンバーは吹き出しそうになる。
だが次の瞬間、夏美が電車から降りる人集りに捕まりそうになったところを高尾は見逃さず夏美の両肩を掴んで自分の方へ寄せる。
「全くもー、夏美ちゃんは!そんなに感動した?」
いつもの様におちゃらけた口調で顔を夏美に近付けて、高尾は言った。近くなる高尾の顔に夏美は思わずびっくりする。
「…!高尾君!ごめんね、こんな時に。つい、ラッシュ見るの初めてだったから。」
しょんぼりしている夏美に高尾はおちゃらけながらも優しく接する。