第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
ーSide 夏美ー
私は高尾君にさよならも言えないまま、お兄ちゃんにお姫様抱っこされて終始無言のまま自宅に着く。
お兄ちゃんは鍵を開けるため私を静かに下ろす。ドアを開けるともうパパとママが帰ってきていた。
相当心配したようで、パパとママは私を強く抱き締めた。やはりそれは向こうでの一件のせいだと思う。
パパとママが私を離すと、お兄ちゃんが囁く。
「…夏美。俺の部屋においで。」
お兄ちゃんはその時ものすごく優しく言ってきたので逆に恐かった。でも逆らえない私は従うしかない。
私とお兄ちゃんは二階に上がってお兄ちゃんの部屋へ入る。
入ると相変わらず無機質で無駄のなく綺麗な部屋だった。私はお兄ちゃんのベッドに座り、お兄ちゃんは私の隣に座った。
そして先程と同じような鋭くて冷たい目をして私に尋ねる。
「夏美。何で今日の事、黙ってたんだ?」
「…だって、昨日喧嘩して、気まずかったから。」
私は口を尖らせて反論した。
「本当にそれだけ?」
お兄ちゃんは鋭く冷たい目のままさらに顔を近づけたので、私は怖気ずいてしまう。
「…だってもし言ったら、お兄ちゃん私の事止めてたでしょ?」
私が涙を目いっぱいに浮かべると、お兄ちゃんは強く私を抱きしめてきた。
「…当たり前じゃないか!!どれだけ、心配したと思ってるんだ!?また、夏美に何かあったと思ったら、俺いてもたってもいられなかった…!」
抱きしめられて私の顔はお兄ちゃんの胸板にあるから、お兄ちゃんの顔は見えなかったけど、お兄ちゃんの震える声できっと苦しそうな表情をしてるのだと思った。
そっか、私、また自分勝手な行動で大切な人を悲しませたんだ。昨日の喧嘩で意地を張った私がバカみたい。
お兄ちゃんの震える声を聞いてようやく私は謝る事を決意した。
「…お兄ちゃん、ごめんなさい。」
「…俺も昨日あんな言い方をして悪かった。ごめんな、夏美。もう、勝手に何処も行かないでくれ…。」
お兄ちゃんはさらに強く抱きしめきて、正直痛かったけど、私は何も言わずに受け止めた。