第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
「…何言ってるんだ?お前?」
俺は目を限界まで開いて豆鉄砲を食らったような表情をした。真理子は表情を崩さずに淡々と話続ける。
「ま、あたしの憶測だからあんたがどう思うかは勝手だけど。お兄さんは今秋田で寮生活してるみたいじゃない?お兄さんがいない寂しさをあんたで補ってるんじゃないかって思ったのよ。あんた妹がいるから女の子の扱いも上手いしね。」
真理子は一呼吸置いてクスクスと笑い、さらに追い打ちを掛けてきた。
「公園であんたらがもめてるの見たわよ。しかもお兄さんめっちゃかっこ良くて強そうだった。あんなお兄さんいたら他の男になんか興味出ないかもね。」
「くっ…!」
俺は真理子の意見を真っ向から否定したかった。けど、今夏美ちゃんの気持ちが俺に少しでも向けてくれているかなんて全くもってわからないから、言葉に詰まった。
「あら、図星?」
真理子が俺の顔を覗き込み、俺を問い詰める。
だけど、今まで夏美ちゃんが俺や多分真ちゃんにも向けてくれた笑顔や思い出が嘘だとは思いたくない。
いや、思えない!!あいつはいつも自分に正直だった。清々しいくらいに。
そんな所に俺は惚れたんだ。
そして一昨日俺のために涙を流してくれた。
ここで折れてなるものか!今さっき夏美ちゃんの隣に相応しい男になるって誓ったんだ!
俺はふっと口角を上げると真理子は心外そうな表情をした。
「…わりぃけど、俺、自分が見たものしか信じないから。お前や周りがどうこう言おうが関係ない。好きにすればいいじゃねえの。」
「…ふーん。相当惚れてんのね。いつまでそんな口が叩けんのか見ものだわ。」
言い切った俺に真理子は左手の手のひらを頬に当てながら呆れ気味に言う。俺は真理子に迫り、人差し指を立て先程より更に眼光を鋭くして言った。
「…もし、夏美ちゃんに何かしたらお前でも許さねえ。いいな?」
真理子は面を食らった顔をして何も言ってこなかった。もうここで俺はこの場をようやく去ることにした。
真理子が唇を噛み拳を塀に当てて、悔しさを発散させていたことを知らずに。