第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
「…ふーん。言い訳をしなかったのはいいね。君の姿勢と可愛い夏美に免じて今日は許してやるよ。」
辰也は妖しく冷たい微笑みを浮かべながら言った。次に彼は高尾の顎を掴んで顔を上げさせる。
「…だけど、次はないと思え。」
妖しくも冷たく鋭い声色で辰也は高尾に言い放つ。そして顎を掴んでいた手を離して、夏美の元へ向かう。
高尾は力が抜けて足を挫きそうであったが、夏美にそのような無様な姿を見られたくないので精一杯力を振り絞って立った。
辰也は夏美の腕を引っ張って自宅へ向かおうとする。
「痛いよ、お兄ちゃん!離して!」
その様子を見た高尾はいてもたってもいられなくなって辰也に力の限り叫ぶ。
「…兄貴さん!最後に言わしてください!」
そして辰也はピタリと止まって高尾の方へ振り向く。高尾は深呼吸してから辰也に思いの丈をぶつけた。
「俺、夏美ちゃんの事、本気で好きっす!!今日は振られたけど、いつか兄貴さんより俺の事を好きにさせますから!!」
(高尾君…。そんなにあたしのことを…。)
夏美は恥ずかしさと嬉しさで体全体の震えが止まらず、倒れそうになるが辰也が空いている手で彼女を支えた。
流石の辰也もこれには驚きを隠せず目が点になる。そして挑発的な微笑みと言葉を放つ。
「…はは。面白いね、君。今の言葉、忘れるなよ。だけど、俺も夏美もそんな簡単にはなびかないからな。君、名前は?」
「高尾和成っす。高1です。」
「そうか、高尾君ね。覚えておくよ。夏美から聞いてるかもしれないが俺は氷室辰也。じゃあ、お互いウィンターカップで会おう。」
辰也は夏美の肩と膝に両腕を引っ掛けて夏美を抱え、自宅へ向かう。
夏美は疲労のせいで反抗する気も起きず、そのまま辰也に体を委ねた。