第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
「…お兄ちゃん!?どうしてこんな所にいるの!?」
偶然にしては出来すぎていて、2人とも呆気に取られる。しかも辰也から発せられるオーラは尋常でないことに2人とも寒気が走る。
「…それはこっちのセリフだ。夏美には家に帰ってから言おう。まずは、君。」
「やめて!お兄ちゃん!」
辰也の冷たく鋭い視線はまず高尾に向けられる。高尾は辰也の凄みに圧倒され腰が引けそうになるが、負けじと辰也の目をしっかり見る。
「…どーもっす。兄貴さん。」
「君は昨日の。一体今何時だと思ってる!?ウチの妹をこんな時間まで連れ回して何してたんだ!?」
夜9時前であり、日本では特に遅い時間帯ではないがアメリカ生活が長い氷室一家にとっては十分遅かった。夏美は年頃の女の子なので尚更心配されていた。
高尾にこれ以上迷惑をかけまいと夏美は2人の間に割って入り仲裁を試みる。
「お兄ちゃん!高尾君に変な事されたわけじゃないから、お願い!そんなに怒らないでよ!」
辰也は冷たい表情を崩さずに夏美を見下ろして冷静な口調で言い聞かせる。
「…夏美。俺は今彼に聞いているんだよ。今は黙っててくれないか。」
「夏美ちゃん。俺なら大丈夫だから。」
心配そうに見つめる夏美を高尾は優しく落ち着いた口調で言い聞かせる。
そして高尾は深く頭を下げて、辰也に謝る。
「本当にすみません!!大事な妹さんをこんな時間まで連れ回したのは事実です!!本当に、本当にすみませんでした!!」
辰也は表情を崩さずにしばらく高尾を見下ろす。
(頼む、伝わってくれ…!!)
切に願って高尾はずっと頭を下げ続けていた。
「…高尾君」
そして夏美は包み隠さず正直に謝る高尾の姿を見て、感激をしていた。