第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
「そっかー。もし高尾君とお兄ちゃんがマッチアップしたら、私楽しみだな!」
嬉々として喋る夏美に高尾は「へ?何で?」と尋ねる。
そして夏美は急に締まった表情をして語り始めた。
「お兄ちゃん、相手を読んでプレーするのがすごく上手いの。それにフェイク、ドライブ、シュート全ての動きが基本に忠実で完璧に洗練されてるから、どれが来るか最後までわからない。今のお兄ちゃんを止めた人はいないの。」
(大我だったら、もしかしたら1人で止められるかもしれないけど…。)
高尾は話を聞きながら、なぜ自分にそんなことを言ったのかわかった気がした。自分の目を指で差しながら高尾は言う。
「つまり、俺の鷹の目でお兄さんを出し抜けるか見てみたいってこと?」
夏美は自分の言いたい事をわかってくれた高尾をさすがと思い、また嬉々として喋る。
「そう!高尾君も相手を読んだり、騙すのが上手いもんね!」
言い方は少し酷い気はしたがそれでも褒められたことに変わりないと思って、高尾は頭をポリポリかきながらへへっと笑う。
「いやーそれ程でも!兄妹揃って言われちゃ、俺もっともっと頑張らなきゃな!」
「うん!今でも強いけど、高尾君ならきっともっと強くなれるよ!」
力こぶを作って自分を奮い立たせる高尾に夏美は精一杯の笑顔でエールを送る。また夏美を愛しく思って、優しい口調で問いかけた。
「…ありがとよ。俺、お前に言われたら日本一になれる気がしてならねーよ。」
「…!全く、相変わらず口がうまいんだから!」
さすがの夏美もこれには赤面し、口を手で塞ぐ。高尾は更に声を低くし、目を鋭くして真剣な表情をする。
「…へへ。言っとくけど、全部本当に思ってる事だぜ。」
夏美は思わず息を飲み、立ち尽くす。そこで、緑間が2人の間に入ってきた。
「お前ら、いいところで申し訳ないが、そろそろ始まるぞ。」
「おー!真ちゃん、わりい!また後でな、夏美ちゃん!」
高尾は爽やかに手を振って夏美の側から離れた。だが夏美は緑間の一言を思い返し赤面して声を荒げた。
「ちょっ!いいところってどこがよ!?」
という夏美の叫びは虚しく消えた。