第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
夏美は突き指した選手にテーピングをしたり、試合中で流れた選手達の汗を吹くためにモップをかけたりしていて、辰也にとうとう気付くことはなかった。
やっと仕事が終わり、適当なところに座ってお弁当を出すとここで初めておにぎりがないことに気が付いた。
「うっそ!?これじゃお腹いっぱいにならないじゃない…。最悪…。」
夏美は落胆し肩を落とした。
その時に高尾が夏美の隣に座り、彼女の目の前に辰也が持ってきたおにぎりを差し出す。
「ほい!夏美ちゃんご所望の物だぜ!」
自分が一番食べたい物が目の前に止まり、夏美は目を輝かせて喜ぶ。
「ありがとー!!そうそう!これよこれ!って、何で高尾君が持ってるの!?」
「さっき、夏美ちゃんの兄貴が届けに来てくれたんだぜ。全くドジっ子だなー。」
「え、お兄ちゃんきてくれたの!?もー言ってよ!!」
高尾がからかうのを無視し、むしろ辰也の来訪を教えてくれなかった事に夏美はぷうっと頬を膨らませる。そんな夏美を高尾は宥める。
「わりいわりい。夏美ちゃん忙しそうだったし。俺もちょっと話し込んじゃってさ。」
「何話したの?」
夏美は高尾の顔を覗き込むように、自分の顔を近付ける。突然顔を近付けてきたので、さすがの高尾もびっくりして、赤面する。もう少しでキスができそうな距離であった。
「ちょっ!夏美ちゃん、近すぎ!!」
高尾に言われて夏美はハッとして、顔を少し遠ざける。
「あっ!ごめんね、高尾君!」
「いや、別にいーんだけどさ。」
(あー、これで付き合ってたらドサクサに紛れてチューしたのによ!)
と、内心で悔しがる高尾であった。
そして高尾は辰也との会話を夏美に話す。