第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
辰也に促されて高尾はハッとする。
「す、すんません!夏美ちゃんに届ければいーんすね?了解っす!…ってあれ?」
(この人、夏美ちゃんと同じ泣きぼくろがあるぞ。てか、よく見たらそっくりじゃね…?)
高尾はついまじまじと辰也を見てしまう。そしてあることに気がついて、両手をパンと叩く。
「も、もしかして夏美ちゃんの兄貴さんっすか!?」
「ご名答。なんでわかったんだい?」
「いやだって顔そっくりだし…!よく教室で兄貴さんのこと自慢してますし。」
「それは嬉しいな。夏美は本当に可愛い大事な妹だからね。」
(す、すげー。こんなキザなセリフ言って決まんのはこの人ぐらいだろうよ…。)
高尾は終始口が開きっぱなしである。なんせ、自分が言うにも悪寒が走って絶対に言えそうにないからだ。
「あ、そうそう。試合見てたんだけど、君いいPGだね。あんなに綺麗にしかも味方のいいところにバックパスが決まるのはアメリカでもなかなかいないよ。」
高尾は意表を突かれて目が大きく開く。
辰也に微笑まれながら褒められると認めてくれた気がして口元がかなり緩み嬉しさがオーラからダダ漏れした。
「ま、マジっすか!?めちゃくちゃ嬉しいっすよ!もしかしたらNBAにも通じちゃったりして!?」
「いや、それはわからないな。」
つい調子に乗った高尾に辰也は冷静に言い聞かせる。
「ですよねー。俺すぐ調子のっちゃうんすよ。」
「はは。とりあえずウィンターカップで会えることを期待してるよ。」
高尾は辰也が陽泉に通っているのは夏美から聞かされていたので、挑発気味に指を差して辰也に言う。
「はい!もちろんっす!お兄さんこそ、予選で落ちないで下さいよ!」
その高尾に辰也は顔をしかめそうになるが、微笑みを崩さずに返事をする。
「ふふ、そっちこそ。じゃあね。夏美によろしく。」
辰也はおにぎりを渡したら、手を振って踵を返し、体育館を後にした。
そして高尾は辰也の背を見て思い決心する。
(俺、黒子以外に負けたくねー奴がまた増えたな。ウィンターカップ何が何でも出るぜ!)