第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
五分前になり、夏美は全ての準備をようやく済ませた。そしてちょうど相手校のチームも体育館に到着し、半面ずつ両校ともアップをし始める。
20分したところで両チームとも、ミーティングをしてから整列し夏美が笛を吹いて、練習試合が始まった。
夏美はアメリカ時代からバスケのルールについては熟知しており、鋭い観察眼を持っているので女子の試合だと審判をすることが多い。
ただ男子だと体力が追いつかないので、審判は男子部員に任せ夏美はスコアラーをしていた。
第二クオーターが終わり両チーム休憩に入る。ちなみに試合は秀徳が15点リードしていた。監督が話している最中に夏美はタオルとドリンクをスタメンに渡した。
監督からの話が終わり、夏美は高尾と緑間に話しかける。
「真ちゃん、今日もシュートすごいね!いつまでたっても見慣れないよ〜。」
「ふん。シュートは遠くから入れてこそ意味があるのだよ。」
「ふふ。高尾君も今日のパス、キレがあっていいね!その調子その調子!」
「へへ、サンキュ!夏美ちゃんに褒められたら、俺もっともっと頑張れちゃうぜ〜!」
「もう高尾君ってば。」
緑間は眼鏡を押し上げて無意識に少し偉そうに言う。
高尾は爽やかに笑って、まるで飼い主に褒められたい一心の飼い犬のようになる。
そんな高尾を夏美は微笑ましく思い、手を口元に寄せて笑顔になる。そして2人の背中を叩く。
「よーし、じゃあ2人とも気を抜かずに頑張るんだよ!」
「「当然なのだよ。」」
「…ぷ。高尾君てば真ちゃんの真似またやってる!しかもちょっと上手くなってきたね!」
眼鏡を押し上げる仕草をしながら真似をする高尾に夏美は思わず吹き出してしまう。そんな彼女を見て高尾はさらに調子のいい事を言った。
「へへ、だろー?俺達マブダチだからな!な、真ちゃん?」
「やめろ、高尾!また適当な事言うんじゃない!勘違いされるのだよ!」
全く堪えない高尾にぷんぷんする緑間。そんな2人のやり取りが面白おかしくて夏美のみならず男バス一同の笑いが止まらなかった。