第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
「あのなー、氷室。興味のない女に好かれたってしょうがねーんだよ。自分の好きな子に好かれなきゃ意味ねーだろ。」
宮地はシュート練習をしながら、やれやれといった感じで夏美に話す。夏美はボールチェックが終わり、モップをかけながら喋る。
「確かにそうかもしんないけど、好きな子にも好かれる可能性だってありますよ?」
「だから、好きな子にだけ優しくすればいいんだよ。」
シュートを放った同時に言い、しかも入ったので宮地はかっこよく決まったと思ったが、夏美に予想外の事を天真爛漫に言われて、肩透かしを食らう。
「つまり、今はみゆみゆだけって事ですか?」
「っておい!?何で知ってんの!?」
「高尾君から聞いたんですよ!」
「へー、高尾がね!」
(高尾のやつ、後でぶち殺す…!)
夏美は宮地に並々ならぬ雰囲気を感じたので、高尾を庇うことにした。
「宮地先輩!高尾君の事怒らないで下さいね。」
夏美は一旦モップ掛けを辞めて、宮地に近づき見上げてお願いをする。自然と上目遣いになるので夏美に言われると、いくら宮地でも断りづらい。
宮地は頭をポリポリとかいて言う。
「へいへい。ま、あいつお喋りだしな!ほんっと、しょうがねー奴だわ!」
宮地が言った後夏美は、軽く丸めた右手を口元に近づけてふふっと笑う。
「まあ、それが彼のいいところじゃないですか!そのおかげであたし宮地先輩に親近感が湧きましたよ!」
「それがあいつのいいところでもあり、悪いところでもあるんだよ。ところでさ。」
宮地が言いかけたところで夏美は時計を見て、冷や汗をかく。
「あ、ヤバい!!もうこんな時間!?」
「流石にヤバいね。残りのモップは男どもにやらせるからドリンク用意してくんね?結構喋ったもんな。」
夏美は元気良く返事をした後、ドリンクを用意しに一旦体育館を出た。宮地は彼女が出ていった後もシュートを放ち続けながら考え事をする。
(高尾のことどう思ってるか聞けそうだったけどダメだったな。てかコンタクトずれただけであんな顔腫れるか?ま、高尾に報告しといてやるか。)