第4章 相棒とマネージャーの果敢な日々
(そういえば、なあんて事があったけ!あの時は宮地先輩怖くてびっくりしちゃったな。)
夏美は宮地との初めての出会いを思い出しながら、部室から体育館まで歩いて行く。
(でもちゃんと気持ち伝えたらわかってくれたし、やっぱりバスケ好きな人に悪い人はいないって事だよね!今だとあれはいい思い出かも!)
夏美はふふっと口角をあげて、手を唇に添えた。そしてあることを思い出した。
(てゆうか、小さい時の大我、お兄ちゃん、アレックスも言ってた。あの頃は本当に楽しかったな!
大我をいじったり、アレックスと手作りしたお菓子を持って四人で食べたり、できない私に合わせてプレイしたり、大我やお兄ちゃんに言われてよくディフェンスやらされたりしたっけ。)
幼い頃の事を思い出したら、急に感傷に浸ってしまい、夏美は悲しい顔をする。
(……ねえ、お兄ちゃん。あの頃に戻りたいよ。四人でバスケしたり、遊びたいよ。あたし、男の勝負とかプライドとかよくわかんないけど、楽しくやるだけじゃダメなの…?)
考えてるうちに体育館の扉まで到着し、急いで鍵を開け中へ入る。急いだのは、涙が夏美に溜まって溢れそうだったからだ。
夏美はジャージのポケットに入れたタオルで涙を拭うが、辰也の事となると涙が止まらなくなった。
モップとボールを取るだけのために用具置き場に入るつもりが、自分の感情が収まるまで留まることとなった。
(……ジュニアハイ、いや大我がどんどん上手くなってからずっと辛そうだったお兄ちゃん。そんなお兄ちゃん、もう見たくない…。
あたし、もう一度、お兄ちゃんが笑って楽しそうにバスケする姿が見たいの…。)
夏美はタオルで顔を抑えてすすり泣いていたが、ガチャっと体育館の扉が開く音がしたので、ハッとした。
(……!やばい!きっと宮地先輩だ。早くモップかけてボール出してゴールの準備しないと!)
夏美は顔をゴシゴシ拭き、まずボール入れを押して用具置き場から出た。