第3章 エース様に万歳!
ーSide 夏美ー
高尾君と別れて私は家に入ると、誰もいないと思ってた家に思いもしない人がいた。
「おかえり。夏美。」
「ただいまー。へ!?お兄ちゃん、帰ってきたの??学校は??」
そう、お兄ちゃんだ。お兄ちゃんは秋田の陽泉高校に通っており、普段は寮生活だ。今は冬休みとか長い休みではないはずだけど…。
不思議に思う私を見て、お兄ちゃんは微笑みを浮かべて理由を言った。
「ああ、明日から三連休でね。ウチの監督が久しぶりに全部オフにしてくれたんだ。もうすぐウィンターカップの予選が始まるし、ゆっくりしたいと思って帰ってきたんだ。
それに夏美と父さん母さんにも会いたかったしね。」
納得した私は数ヶ月会えなかった寂しさでついお兄ちゃんに抱きつく。お兄ちゃんはびっくりして「うわっ。」と言うと、私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
「はは。全く、夏美は。ただいま。学校はどうだい?」
「へへ。学校楽しいよ!嫌な事だってあるけど、それ以上に楽しい!友達もいっぱいできたし!」
私は精一杯の笑顔で言うと、お兄ちゃんは安心したように微笑んでくれた。
「そっか。夏美が楽しそうで安心したよ。メールだけだと顔が見えなくてわからないしね。」
「ふふ。お兄ちゃんこそ、元気そうで良かった!」
「今日は随分遅いけど、どこ行ってたんだい?」
「ああ、部活の人とご飯食べてたの!」
「男?女?」
そう聞いたお兄ちゃんの声色と顔が少し怖くて、私はまずいと思い誤魔化す。
「やだなー。お兄ちゃん!女バスメンバーで女子会してたんだよー。もう話が止まらなくてつい遅くなっちゃったの。」
私は冷や汗を浮かべていたけど、誤魔化すように笑って両手を慌てて左右に振る。
それでもお兄ちゃんの疑いの目は消えない。
でも、それ以上疑っても意味もないと思ったのか、険しい表情を崩した。
「ま、それならいいんだけど。全く、今日帰ってくる時メールしたのに。」