第3章 エース様に万歳!
ーSide 高尾ー
俺は夏美ちゃんを家まで送り別れた後、かなり機嫌が良かった。
なんせ、あの夏美ちゃんとデートできることになったんだ。顔が緩みまくって仕方がないぜ!
「OKしてくれたってことは俺の事、少しは意識してくれてんのかな?」
誰もいない夜道で俺は独り言をつぶやく。もちろん返事は返ってこない。
でも、夏美ちゃん最後何をあんなに悩んでたんだ?俺は何かした覚えはないけど、一体なんだったんだろ?てか、無理させてねーかな?
頭は夏美ちゃんの事でいっぱいだった。だけど、初めて会った時から、バスケしてる時以外はほとんど夏美ちゃんのことが頭から離れない。こんなに人を好きになったのは初めてなんだ。
夏美ちゃんは俺や真ちゃんと話してる時は笑顔を結構見せてくれることが多いよな?
まさか真ちゃんの事本当は好きとか?
…いや、待てよ。彼女の性格ならきっとハッキリと断るはず。それに俺はこの前聞いたんだ。好きな男はいないのか。
彼女は戸惑う事なく元々大きい目を見開き、つぶらな瞳を輝かせ言い放った。
“お兄ちゃん以外に好きな人なんていないよ!”
余りの予想外な答えに俺は肩透かしを食らったのをよく覚えてるぜ。だから俺は真ちゃんの事が好きというのはないだろ。
てか、あいつのこと好きだったら趣味疑うぜ。
俺は真ちゃんに対して心無いことを思ってるのは自覚してはいるが、好きな女の子のこととなるとそういう余裕はなかった。
…ただ、ちょっとブラコン気味なのが引っかかるけど。
夏美ちゃんが転校してきてから全校生徒から評判が立っていた。
連絡先交換をしようとする輩、いきなりご飯やデートに誘う輩、そして告白する輩などたくさんいたが、夏美ちゃんは全て断っていた。
また最初は夏美ちゃんにいい顔しなかった女子達がその余りの潔さに憧れや尊敬を抱き、彼女の素直な人柄も相まって次第に女子達にも受け入れられるようになった。まあ、それでも妬む女はまだいるが。
俺はずっと彼女の事を考えながら自分の家に着き駐車場のスペースに自転車にしまう。