第3章 エース様に万歳!
高尾はそれを聞いてホッとした。また素直に感情を表現する彼女を愛おしく思い微笑みを浮かべ、手を伸ばし彼女の頭をぽんぽんっと撫でていた。
「え?え?高尾君…?」
夏美は最初高尾の行動にびっくりした。しかし彼の表情を見たら心地よい優しさを感じ、いつの間にかズキュンってときめいて、赤面した。
また夏美は涙のおかげで目が潤い、少し上目遣いで高尾を見上げる形になる。
「夏美ちゃんって優しいんだな。サンキュ、俺のために泣いてくれて……」
(やべえ。そんな顔されたら抱きしめて、ちゅーしたくなるだろ……)
(いつもお調子者な高尾君がそんな顔すると、なんだかお兄ちゃんみたいだな。ふふ。ギャップあっていいかも)
「ふふ、ありがとう。高尾君も優しいよ」
まるでカップルのようにお互いを褒めあって笑い合う。本当にカップルになるのはまだまだ先である。だが2人ともこの瞬間は楽しくて幸せを感じていた。
「へへ、サンキュ。一応言っとくけど、俺もう真ちゃんの事、憎んでなんかないぜ。寧ろ同じチームになってあいつの事尊敬っていうと恥ずいけど、認めてる。
ムカつく奴だけど、変な奴だけど、あいつが誰よりも練習して努力してんの見てたら、嫌いになれなくってよ」
高尾の表情はどこかスッキリしていて夏美は安心した。
「ふふ、なんだかんだ言って、真ちゃんと高尾君いいコンビだよね」
高尾は夏美に言われて、恥ずかしくなり茶化した。
「え。ちょっ!やめてよ!夏美ちゃん!認め合ってるのは確かだけど、別に好かれてるわけじゃねーもん」
高尾が言うと、夏美は転校してきた日に緑間が言った事を思い出し、咄嗟に口とお腹を抑えたが我慢できずに吹き出し、笑い出す。
「ぷっ。アハハハ!高尾君ってば、真ちゃんと同んなじ事言ってる!」
「うそでしょ!や、やべー、超ウケる!」
高尾もお腹を抱えて、2人して笑いが止まらずにいた。
…この時にバックにしまってた夏美の携帯電話にある人から着信が来ていた。
だが、夏美は高尾と過ごす時間が楽しくて家に帰るまで全く気が付かなかった。