第3章 エース様に万歳!
高尾は落ち着いてから咳払いをし、夏美の先ほどの質問に答え始める。
(かっこ悪くて本当は夏美ちゃんには言いたくなかったけど、俺を知ってもらうには、やっぱりちゃんと言おう!)
「まず、キセキの世代の事は色んな奴から聞いてるだろ?」
「うん。真ちゃんはその5人の天才の内の1人なんでしょ」
「せーかい。で、話はそっからだ」
かつて高尾は彼らにボロ負けして心が折れたが、高校になって絶対リベンジしようと決意した。
その矢先に、入部したら自分の目の前に緑間がいて、気持ちのやり場に困った事を順を追って全て夏美に話した。
「あん時は、マジ笑えなかったわ。目の前に敵が自分のチームにいるなんてよ。しかも、あいつ俺の事覚えてなくてさ。むかついて、自分だけ覚えてるのが悔しかった」
話してるうちにその時の気持ちが蘇り、高尾は苦虫を噛んだような顔をして、拳に力が入って手がぶるぶる震えていた。
「高尾君…。そうだったんだね」
(もうそれだけで、充分に伝わってくるよ。本当に悔しかったんだね。
状況は違うけど大我に抜かされたとき、お兄ちゃんも今の高尾君みたいに悔しがってた。…本当に男の子って負けず嫌いよね)
夏美はいつの間にか涙がポロポロ零れ落ちていた。もちろん、高尾はびっくりして慌てて彼女を慰めようとする。
「え、え、どーしたん!?夏美ちゃん!?俺、何か変な事言った!?」
「…ぐすん。ああ、ごめんね。その時の高尾君の気持ち考えたら、感情移入してなんだか涙出ちゃって」
夏美はハンカチをカーディガンのポケットから取り出して涙を拭く。