第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
ーSide 辰也ー
海常と洛山の試合を敦と観戦した後で俺達は自動販売機のコーナーで寛いでいると、緑間君達秀徳一行と遭遇した。
「あれ〜、ミドチン。室ちんの妹ちゃん、一緒じゃないの?」
敦のやつ、夏美の事覚えてたのか?そういえば写真くれくれ煩かったような…。もしかして気に入ったのか?
俺は敦を見ながら考えていると緑間君が淡々と答える。
「ああ、高尾と一緒に何処かにいるのだよ。それにしても、なんで氷室を知っているんだ?」
「うーん、去年ここで会ったんだー。スノー大福みたいで可愛かったからさー。」
あの淳が顔を赤らめて答えている。夏美に一目惚れしたな、敦のやつ。だけど夏美は敦の事苦手そうだったからどっちにしろ報われないだろうな。
可哀想に、敦。
俺は敦を惨めに思っていると、秀徳の一行が高尾君と夏美がどこにいるのか話し合っていた。そして高尾君達を探そうと躍起になり始めた。
「ねぇ、室ちん。俺達も夏美ちん探そうよ!」
敦は俺の両肩を掴み、目をギラギラとさせている。ヤバいぞ、これはスイッチ入ったな。敦に俺は子供を諭すように言い聞かせる。
「敦、そんな野暮な事やめとけよ。俺は手伝わないぞ。」
「室ちんはさ、大事な妹が取られちゃっていいの?」
たまに敦に痛いところを突いてくるから本当に困る。けど誤魔化しても意味ないから正直に答えることにした。
「ああ、けど夏美が幸せになるなら、それでいいのさ。」
「ふーん、本当は寂しかったりしてね。じゃ、俺は探すから室ちん先帰ってて〜。」
敦はアイスを頬張りながら俺と別れ秀徳一行と捜索を開始した。
敦にまた痛い所を突かれた俺は目を俯く。
夏美には俺しかいないと思ってたのに。ついこないだまでは俺の事が1番だと言ってたくせに。
夏美がトラウマを乗り越えて、初めて他人を愛せるようになって喜ぶべきなのに、まだ内心は寂しさと嫉妬が渦巻いている。
だけどあんな顔を見せられたら引かざるをえないもんな。
所詮兄である俺は見守ることしかできないから。
「高尾君、夏美の事、泣かしたら本当にただじゃおかないからな。」
俺の大事な可愛い夏美、どうか幸せになってくれ。