第3章 エース様に万歳!
「うっそ!?気づいてたのかよ。真ちゃんにはばれねーと思ってたのに」
嘘を言ってももうしょうがないと思ったので、ここは素直に認めることにした。だか、緑間にバレたことは腑に落ちない。
「いや、お前かなりわかりやすいし、先輩達も気付いているのだよ」
緑間が眼鏡を押し上げてズバリと言った。
緑間はプライドが高くて、表面的に他人にあまり興味がないように見えるため、彼の口から今のような言葉を言われるのは何か違和感がある。
「今から俺は帰る。お前はまだここにいろ」
「へ!?真ちゃん、今なんて言った!?もっかい!ワンモア!」
「2度は言わん。じゃあな」
そして緑間はボールを片して、更衣室へ向かった。
高尾は緑間が気を使った事に信じられず、口をポカンとしばらく開けた。
「あれ?真ちゃん、帰っちゃうの?シュートの数数えようと思ったのに」
更衣室へ向かう緑間に声をかけ夏美は残念そうな顔をする。
「ああ、俺はもう今日は人事を尽くしたからな。それと氷室、高尾がまだ練習したいから付き合ってくれと言っていたぞ」
「へ?どういうこと?」
「ちょっと!真ちゃん!?」
高尾と夏美はお互いに顔を見合わせ、何が何だかわからないという感じだった。
(全く、高尾の奴。意外とヘタレなのだよ)
体育館を後にした緑間は終始呆れた。自分ではなく他人のことだからそう言えるのだろう。
緑間がいなくなって、2人きりになり、一気に静寂が訪れた。