第3章 エース様に万歳!
「高尾君、真ちゃん!えらいね!でも明日は予選の最終調整のための試合あるんだから程々にね!」
夏美に呼ばれて高尾と緑間は、それぞれ違う反応をする。
「夏美ちゃんじゃん!どーしたのよ、一体?」
高尾は心底嬉しそうに目を輝かせていたが、一方緑間は、眼鏡の位置を直しながら憎まれ口を叩く。
「ふん、氷室か。覗きとはいい趣味なのだよ」
「ちょっと真ちゃんってば、まるで私が変態みたいじゃない!だって、体育館の灯りがついてるしドリブルの音が聞こえたら気になって見に行くでしょ」
夏美は緑間の言い方にさすがに頭にきて声の調子が上がり、ぷぅと頬を膨らませて怒りを表現した。だが緑間は気に留めない様子でふんと鼻で笑い、シュート練習を再開した。
「ちょ!真ちゃんったら、もう…」
そんなスカした彼に夏美は慣れた様子で溜息を吐く。
すかさず高尾も言い返す。
「おい!真ちゃん!もうちょっと言い方考えろよ。夏美ちゃんは女の子なんだから!」
(でも!夏美ちゃんが俺だけに変態になってくれたら話は違うんだけどね〜。ククク!)
だが表は紳士ぶってるだけで、裏ではしっかりお盛んな男子高生である。
そして瞬時にあんなことこんなことを妄想してしまい、かすかににやけてしまう。
「…たく、お前ら俺の邪魔をするならさっさと帰るのだ…」
緑間は高尾に注意されて一旦手を止めて振り向くと、一瞬高尾が何故かニヤついていたのを目で捉えた。
「おい、高尾。何ニヤついてるのだよ?」
(嘘だろ!何でこうゆうときは鋭いんだよ!?)
高尾は青ざめたが、口笛を吹きながらごまかす。
「えー、何のことかなぁ?真ちゃんの気のせいじゃなーい?」
何の話か良くわからない夏美はとりあえず頭にクエスチョンマークを浮かべて、キョトンとした。
(…高尾の奴、全く誤魔化そうとしてるのがミエミエで滑稽なのだよ)
そして呆れた緑間はそっと高尾に耳打ちした。
「おい、氷室のこと好きなんだろう?」
高尾は心底驚き冷や汗をかいた。
緑間とはバスケや授業以外の話を全くした事がないから余計にだ。