第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
ーSide 夏美ー
試合が終わって、感動しっ放しの私はずっと涙がポロポロと零れ落ちていた。涙を零す私に後輩マネージャーの大坪多恵ちゃんはタオルを渡してくれて、それで涙を拭く。
皆カッコ良かったけど、高尾君の最後のお兄ちゃんとのマッチアップが最高にカッコよかった。
彼は鷹の目で仲間の位置を認識し、最後まで信じた。その心に私はやられた。
それにお兄ちゃんと何か話してたけど、2人は公園の時みたくピリピリしてなくてお互いを認め合っている雰囲気だったからそれが余計に私を感動させた。
鷹の目でお兄ちゃんを出し抜けるんじゃないかと読んでたけど、まさか本当にやってのけるなんて。
高尾君、かっこよ過ぎだよ…。
そう彼に感心していると、意中の彼が私の元へ眩しい笑顔を向けて帰ってきた。
「よぉ!勝ったぜ、辰也さんに!」
「…高尾君!高尾君!」
私は彼の顔を見たら居ても立っても居られなくなり、その場で彼の胸元に抱き付いた。
「ってうおおい!夏美ちゃん、人見てんぞ!」
当然だけど困惑する高尾君。だけど人の目なんかもう気にせずぎゅっと抱きしめる力を強め、彼を見上げた。
「嫌!だってかっこ良かったんだもん!」
ごねる私に、高尾君は優しく微笑んで私の頭を撫でると耳打ちをしてきた。
「…夏美。後で2人っきりになれるとこ、行こうぜ。」
甘く囁かれ吐息をかけられると体がピクピクと震え、心臓のドキドキは最高潮だった。もちろん答えはただ一つ。体の震えが落ち着いてから彼の顔を見上げ返事をした。
「…うん。もちろん。」
「決まりだな。じゃあ皆行っちまったから戻ろうぜ。」
私は彼の胸元から離れると、彼は手を繋ごうと差し伸べてきた。
当然払い除ける事なく彼と指を絡ませて手を繋ぎ歩き出した。