第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
(こりゃ、2度目だな!)
2度目のリリースタイミングで飛ぼうとした高尾を見て辰也は1度目のリリースタイミングでシュートを放とうとした。
「なーんてな。」
高尾はニヤリと笑う。次の瞬間、緑間が横からブロックに入ろうとした。鷹の目で緑間の位置を認識していたのだ。
だけど辰也は何故か不敵な笑みをまた浮かべて高尾に言い放つ。
「ふっ。残念だったね、高尾君。これはシュートじゃあない!」
「まさか!?そんなバカな!?」
目を見開いて驚く高尾と緑間。それは夏美も同じだった。
「まさか、お兄ちゃんの狙いは!?」
そう、辰也が放ったのはゴールへのパス。そこへ紫原がアリウープで決める、それが彼の狙いだったのだ。
紫原がボールをキャッチしそうになるところを夏美は目を瞑りそうになるが、高尾に言われた事を思い出してしっかりと見届ける。
(最後まで見届けなきゃ!まだ時間はある!)
「なーんてな。辰也さん!まだだぜ!」
高尾がニヤリと笑ってから威勢良く言うと辰也はゴール近くを確認した。なんと宮地がそこまで来て、紫原とボールを掴みあって対峙していた。
「ちょっと、あんたマジで邪魔なんだけど?ひねり潰すよ!」
「うっせ、このデカ物野郎!先輩に向かって生意気な口叩いてんじゃ、ねえ!」
その光景を見て夏美や秀徳メンバーは有りっ丈の声を出す。
「宮地先輩!負けないで下さい!!」
「宮地さん、いっけー!!」
「宮地さん、頼みますよ!!」
(あと3秒…!お願い、神様!!)
夏美は両手で握り拳を作り時間が過ぎるのを待つ。
3…2…1…0、ピー!!
両者でボールを押し合ってるままタイムアウトを迎えた。
結果は90対88で秀徳の勝利である。
夏美は一瞬信じられなくて頭が真っ白になるが、何度もスコアを確認し、選手達の笑顔と雄叫びで勝利を確信し、感動で涙をポロリと流した。
「すごい、すごい!!やったね、高尾君、皆…!」