第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
翌日、高尾に励まされたおかげでなんとか眠る事ができた夏美は気持ち良く朝を迎えることができてご機嫌だった。
秀徳対陽泉は第二試合に行われるため、第一試合のインターバルでアップを終わった後は時間になるまでゆっくりしていた。緑間のラッキーアイテムについていじったりしていた。
始まりの時間になりコートへ入場すると、準決勝とあって歓声が物凄くて夏美は圧倒されそうになるけど、選手達は威勢を崩さず落ち着いていた。秀徳も陽泉もだ。
ここで夏美はふと辰也を一目で見て心で決心した。
(…お兄ちゃん、私、今日は高尾君を全力で応援する。秀徳の一員として、私個人として!)
円陣を組んで両チーム整列し、ジャンプボールが放たれる。紫原はジャンパーバイオレーションすることなく、陽泉が先制をものにした。
第1クオーターから第4クオーターまで両チームは選手個人の能力を最大限に生かした連携をして、接戦を繰り返す。
第4クオーター残り20秒で90対88で秀徳がリードしていた。
ここで陽泉側が速攻を仕掛け辰也にボールが渡る。急いで高尾も自分のゴールに戻る。先に追いついたのは宮地だけど、辰也の鮮やかなフェイクに引っかかって抜かれてしまう。
(やっぱり油断も隙も無いんだから…!)
これほど辰也のプレーが敵側から見ると本当にハラハラさせられるものだと言う事がよくわかる。夏美は早く20秒が過ぎて欲しくて堪らなかった。
そしてスリーポイントラインギリギリで高尾と辰也がマッチアップをし、互いに睨み合う。
(辰也さんとは初のタイマンだな。それにもう時間はない。ここで蜃気楼のシュートを打ってくるはずだ!)
辰也はまるでそうだと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべシュート体勢に入る。
ミーティングの時に夏美から蜃気楼のシュートのカラクリを教わった高尾はリリースタイミングを見極めるためギリギリまでジャンプはしなかった。
(…やっぱな。さあ、1度目でそのまま打つか!?2度目でか!?)