第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
「だろ?だから、明日は声が枯れるくらい応援してくれよ?」
「…勿論だよ!デスボイスになるくらい声出すね!」
私が両手を腰に当てて意気揚々と言うと、高尾君は目を丸くしてから吹き出した。
「ブフォっ!いくらなんでもそこまでしなくていいわ!」
「…冗談だってば!」
私がそっぽを向くと、高尾君が目をこすって謝る。
「わりい、お前、冗談言うキャラじゃないから、つい。」
「じゃあ、これからはいっぱい冗談言ってあげるね!」
私は笑顔で言う。
「何でそうなんの!?ぷ。マジ受けんだけど!」
「もーうるさい!」
吹き出す高尾君に私はムキになって頬を膨らませる。だけど彼はずっとお腹を抱えて笑っている。
でも、そうやって他愛のないやり取りを続けると、私の不安がいつの間にかなくなっていき、顔が綻ぶ。そして彼といるのが楽しくて、どんどん彼の事が好きになるのを感じた。
「落ち着いた?」
やっと笑いが落ち着いた高尾君は私の肩に手をポンと置く。
「うん。ありがとう。…高尾君に電話してよかったな。」
私は口元に手を添えて微笑むと高尾君はまた頭を撫でてくれた。
「どーいたしまして!とにかく、明日は絶対勝って、お前と付き合うからな!」
眩しい笑顔で言ってのける彼に私は湯気が出るくらい赤面した。でも私も物申したい事があるから、緊張と恥ずかしさの余韻で震える声を絞って出す。
「も、もし負けても私は高尾君と付き」「おおっと!そっから先は言わせねーよ!」
高尾君は人差し指を立てて私の唇を塞ぐ。シンガポールと同じ展開だ。
「言ったろ?俺から言わせろって。それにここまで来たら勝つしかねーだろ!」
なんとも挑発的な彼に男気を感じて目が離せない。
こんなに私をドキドキさせるのはもうこの人しかいないよ。
「…うん!そうだね、男の子ならそうこなくっちゃ!絶対勝とうね!」
「おうよ!俺以外の男なんか目に入らないほどのプレーを見してやっからな!」
私達は笑い合い指切りをする。
本当はもっと一緒にいたかったけど、明日の為にここで切り上げることにして、帰路につく。