第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
辰也さんは同じ中学だったけど学年が違うから把握しきれないこともある。
直接夏美ちゃんに聞いても心配をかけまいとして、笑って誤魔化すだけだった。辰也さんは夏美ちゃんとタメのストバス仲間に事情を聞くととんでもないものだった。
成長した夏美ちゃんの体目当てで近付いた元ボーイフレンドは辰也さんに殴られた腹いせにありもしない噂を立てて周りを味方につける。
夏美ちゃんの周りには誰もいなくなり、聞くに耐えない悪口を言われ、彼女の私物は壊され、服で隠れる部分を痛め付けられる毎日が続く。
おまけにそいつは金持ちなのをいい事に莫大な金と辰也さんを傷害罪で訴えるのを辞める代わりに、夏美ちゃんにした事もなかったことにして欲しいと後日父親が交渉をしてきた。
両親は最初は勿論反対したが、裁判をするには氷室家側は不利であることを脅され、経済的にも裁判をする余裕はなかったので仕方なく条件を飲む。
だけど両親は我が子の尊厳を守る為、金は受け取らなかった。
…両親の気持ちを考えると本当に悔しかっただろうな。
夏美ちゃんは暫く学校に通い続けるもののついには心が折れて不登校になってしまう…。
両親は無理させることなく通信教育を受けさせて療養に専念することに決めた。
辰也さんはなるべく練習を切り上げて夏美ちゃんの面倒をみると、益々彼女は辰也さんから離れなくなった。
また心配したアレックスさんが自分のバスケクラブの手伝いを勧める。そこに通う子供達と触れ合って本来の夏美ちゃんを取り戻そうと計ったのだ。
読み通り、優しい彼女は子供達の人気者となり、彼女自身も子供達に癒されていた。
1年くらいこの生活を続けると、夏美ちゃんは元気を取り戻す。けどこんな生活はいつまでも彼女の為にも良くないと判断した両親は日本へ帰ることを決意する。