第9章 WC〜後は天命を待つのみなのだよ〜
ーSide 高尾ー
WC予選は1番のライバルである誠凛に辛勝し、WC出場を果たした。それから準々決勝まで問題なく勝ち進み、準決勝の対戦カードを真ちゃんと見に行く。
第二試合、陽泉対秀徳と書かれていた。
ま、トーナメント表見た時からこうなるとは思ってたけどよ。
俺はつい口角が上がりニヤついた笑いをする。
「おい、高尾。なにニヤついてる?」
真ちゃんは怪訝そうな顔で尋ねてきた。
「わり。待ち望んでたからついな。」
「陽泉とやるのがか?」
俺は真ちゃんに顔を向け、メラメラと燃える目付きで言う。
「…ああ、絶対負けたくねぇ奴がいっからよ。」
「そうか。俺はどの試合も人事を尽くすのみなのだよ。」
「頼むぜ、エース様!」
相変わらず仏頂面の真ちゃんの背中を俺はパンと叩く。真ちゃんとやり取りをしていると、俺の隣に誰か来たので横を向く。
そいつは辰也さんと紫原だった。
「…やぁ、高尾君じゃないか。」
辰也さんは微笑んでるだけなのに、妖しい色気がムンムンと出ている。
全く、本当に同じ男なのかよ?
「…久しぶりっすね、公園以来じゃないっすか?」
表面的にはヘラヘラしてるけど、内心は闘志で煮えたぎっている。
「そうだな。それよりも明後日の準決勝はよろしく頼むよ。…手加減はしない。」
辰也さんもどうやらマンマンじゃん、やる気。
穏やかな微笑みとは裏腹に凶悪なオーラが身体中から出ているのを直感で感じる。
「もちろんっすよ。俺、いや俺達は全力で迎え撃ちますから!」
辰也さんのオーラに負けじと俺は指を差して挑発する。
「…望むところだ。ところで話したいことがあるんだけど、時間はあるかい?」
いきなり俺は拍子抜けして目を見開く。
「へ?いいっすけど、一体何すか?」
「…夏美の事でな。ちょっと話しておきたい事があるから外までついてきてくれないか?」
夏美ちゃんの事と言われて俺は当然気になって仕方ない。まだ時間はあるしついてってみるか。
「…真ちゃん、わりぃ。先輩達に言っといてくんね?」
真ちゃんは了解の意を示して先に控え室へ戻り始めた。
辰也さんも紫原に戻ってもらうように言って、俺達は外へ出た。