第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
ーSide 夏美ー
今まであんなに振り回したのに、高尾君、あんなに私の事を思ってくれてるなんて…。それにずるすぎだよ。待っててくれないかって。もう私の方が待てないかもしれない。
あの時間は終始高尾君にドキドキしっぱなしで心臓がどうにかなりそうだった。高尾君に肩を抱き寄せられて途中まで送ってもらい、先生達に見つからないように素早く部屋へ戻りドアをノックする。
部屋に入ると早速2人に詳細を求められて順を追って話すと、もう2人は黄色い声を出しながら悶えまくりでなかなか寝付けない。
途中で真理子ちゃんの話になるけど、今日あった事は黙っておくことにした。優ちゃんは同じ中学だったけど話を聞いているとどうやら知らなかったみたい。
2人は口軽くないから大丈夫かとは思うけど、でも私も真理子ちゃんの立場だったら絶対嫌なはず。きっと誰にも言わずに内に秘めていたんだろう。
そのぐらい高尾君の事が本気で大好きだったんだよね?真理子ちゃん。
以前高尾君に告白された時に私は曖昧な答えを出して振った事、きっと真理子ちゃんは許してないはず。そう思うと彼女は今まで私の事を気に食わなかったのが容易に想像がついた。
…でも今更許してくれなんて言えない。私にできることは自分の意思と気持ちを貫き通して、高尾君と誠実に向き合って行く事でしょ?
それにもう、お兄ちゃんと比べたりしない。だって高尾君は高尾君で素敵な人だもん。私には勿体無いくらい。
「あれー?夏美、なんで黙ってんの?」
愛ちゃんにいきなり顔を覗かれてびっくりする。真理子ちゃんの事は黙っておきたいから高尾君の話に戻す。
「ん〜!高尾君って実はカッコいいよなーって!」
「もう付き合う前から熱々すぎ!こっちが火傷する!あっち行って!」
冗談交じりに手でしっしっとする優ちゃんを私はからかう。
「優ちゃん、ひどーい!よーし、ずっとくっついてやるー!」
「うわ〜、来んなし夏美!」
それから私達は他愛もないやり取りを続けて眠ることなく夜を明かし、3人ともクマと眠気が酷くてバスと深夜の飛行機で殆ど寝ていた。
成田空港から家の最寄り駅までは高尾君と一緒に帰り、駅までママが車で迎えに来たのでそこで彼とお別れし、濃厚で楽しかった修学旅行が終わりを迎えた。