第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
このままの状態でいたいのはやまやまだったけど、頭を下げたままだとさすがに苦しい。
「…わりい、夏美ちゃん。頭上げたい。」
「あ、ごめんね!」
夏美ちゃんは慌てて素早く俺を放す。いつの間にか涙が目に溜まっている俺と目が合うと、夏美ちゃんは引くこともいじることもなくニッコリと微笑み、ティッシュをポケットから出して俺に渡す。
「サンキュ。」
「いいえ!だって、私言ったでしょ?高尾君の事、何があっても信じるって!」
「…夏美ちゃん、お前ってやつは…。」
そこまで俺を信じてくれるのか…?
全くどこまで俺を夢中にさせる気だよ。
「…それに高尾君は去年の我儘な私を許してくれたでしょ?さっき真理子ちゃんにも言ったんだけど、今度は私が高尾君を許して信じる番!」
俺は夏美ちゃんの事がこれ以上ないくらい好きだと思ってたけど、どうやら限界なんてないみたいだな。
どんどん、はまっていく。
俺は気持ちが溢れ出していつの間にか強く抱き締めていた。WCの時もこうやって抱き締めたのを思い出すけど、その時は夏美ちゃんに抵抗されちまった。
まぁ、強引にそのまま抱きしめてたけど。
だけど今回は俺をすぐに抱き締め返してくれ、心臓が壊れんじゃねーかってくらい激しく動いている。
「…本当にいいのか?ヒドイとか最低とか思わなかったの?」
「もうこの前言ったじゃない!過去は過去!今の高尾君を信じるって!高尾君は私の言ってること信じてくれないの?」
不満げに頬を膨らます夏美ちゃんがまた一段と可愛くて堪らない。俺は思わず微笑む。
「…悪りい、嬉し過ぎて戸惑ってんだよ。」
「ふふ。高尾君ってば可愛い!」
「な!可愛いって言われて嬉しくねーんだけど!」
「ごめん、つい。」
一息ついて自分を落ち着かせ顔を近づけ包み込むように抱き締めると、夏美ちゃんは戸惑い始めて俺はフッと口角を上げる。暗くてよくわからないけど多分赤面してるだろうな。
「今から、すっげーかっちょいいこと言うから、心して聞けよ!」