第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
決心した私は不敵に笑い続ける真理子ちゃんの目をしっかりと逃げずに見つめる。
「…真理子ちゃん。私、何があっても高尾君と自分を信じるって決めたの。」
「…へー。そんな綺麗事言っちゃって、本当は動揺してるくせに。」
真理子ちゃんは人差し指を立てて私の左胸を突つく。
多分ここまで言ってくるのはまだ高尾君の事、諦め切れてないんだと思う。
だからこそ、ここで私が正直にはっきり今の気持ちを伝えなきゃいけないんだ!
私は一呼吸置いて真理子ちゃんに伝える。
「その通りだよ。けど、高尾君と喧嘩して初めて彼の存在の大きさに気付いたの。
真理子ちゃんと楽しそうに喋ってた時なんか、羨ましくて胸が痛くて堪らなかった。もう、私に笑顔を向けてくれる事はないんだって思うと悔しくて寂しくて…。」
「…。」
真理子ちゃんは笑みを崩して黙って聞いている。段々感情が高ぶって私はいつの間にか声を張る。
「自分の気持ちに素直になるまで、私は色んな人に心配や迷惑を掛けてきた。
でも皆がいたからここまで来れたの。それに高尾君はあの時の我儘だった私を許してくれた…。
だから皆や自分のためにも、今度は私が高尾君を許して信じる番!」
私は言い終わっても真理子ちゃんの目をしっかりと見つめる。真理子ちゃんは唇を噛んで踵を返した。
「…勝手にすれば。」
私は彼女に掛ける言葉が見つからないため、そのまま高尾君が待つ展望台へ急いで向かう。
…真理子ちゃん。貴方もいなかったらいつまでも高尾君への気持ちに素直になれなかったかもしれない。だから、正直感謝してる。直接は流石に言えないけど。
何かを手に入れる時は必ず何かを失う。それさえも受け入れられなかった昔の私は本当に子供だったと思う。
少しは成長したのかな?
展望台に到着すると高尾君が壁に寄りかかって待ってくれていて、声を掛ける。