第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
1日目は全体行動でほとんど終わってしまうが2日目と3日目はそれぞれのグループで自由行動をすることになっている。
マーライオン、マリーナベイサンズ空中庭園、オーチャードストリート、アラブストリート、シンガポール動物園等を夏美達は二日間かけて巡る予定だ。
基本高尾は夏美の隣をキープし、お互いの近況や他愛もない話で盛り上がっており、他の四人は羨ましがりながらも微笑ましく見守る。
そして3日目の日の入り頃、マリーナベイサンズ空中庭園で高尾は夏美と一緒に絶景を楽しみ、はしゃいでいた。
「すっごーい!夕陽めっちゃ綺麗!ね、高尾君?」
「おっほー!すげ〜な!こりゃたまらんなぁー。」
橙色に煌びやかに美しく輝く夕陽に感動して魅入る夏美の横顔を見ながら、高尾は夕陽をそっちのけで見惚れていると、高尾の視線を感じて夏美はキョトンとした顔を向ける。
「どうしたの?」
高尾は一旦一呼吸して、真剣な眼差しで言った。
「…なあ、今日夜の9時半にホテルの展望台に来てくんね?」
(…まさか、まさか?)
鈍い夏美も流石に感づき、赤面して胸がドキっとするがそれ以上に嬉しくてとびっきりの笑顔を向ける。
「…うん、わかった!お風呂入ったらすぐ行くね!」
「おうよ!あんま長風呂すんなよ!」
「しないし!」
「はは。じゃあ、皆んとこ戻ろーぜ。」
高尾も子供のようににかッと笑って夏美の肩をポンと置くと、緑間達の元へ一緒に向かった。
「お二人さーん?なーに話してたの?」
優がニヤニヤすると、高尾はウインクをし人差し指を立てて自分の唇につける仕草でぶりっ子風に言った。
「ふっふーん。えぐっちゃんには、ひ・み・つ!」
「うわ、高尾君…。キモいんだけど!!」
「高尾、気持ち悪いのだよ。ばかめ。」
声を揃えて言う引き気味の2人に構わず高尾はお腹を抱えて吹き出した。
「ブフォ!お二人さん気が合うね〜!?実はできてんの!?」
「ちょっ!なに言ってんのよ!?」
「適当な事を言うなといつも言ってるだろうが!!いい加減にするのだよ!」
「そろそろ真ちゃんも冗談通じるようになれって!…って、アギャー!」
逆にからかわれた緑間は高尾にゲンコツをかますが、誰も止めることなく笑って見守っていた。