第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
それから修学旅行まで2人は教室や部活の合間以外で喋ることが少なくなる。
じゃあ高尾と緑間の自主練に夏美が付き添えばいいという話になるが、夏美の家は基本門限があるから、練習が終わると帰ってしまうことが多い。
家に誰もいなかったり前以て伝えていれば別だが。
高尾だって目標のためにも毎回一緒に帰るわけには行かなかった。
土日は勿論部活だが夏美は今月は女子の練習試合に付き添う事が多く、気が付けば高尾とは全く絡まなくなっていた。
(…高尾君、練習頑張ってるのかな?早く修学旅行でいっぱい喋りたいよ。いつも高尾君は私の事知ろうとしてたし見てくれた。…今度は私の番だね。)
自分のスキルアップのためより一層練習に励む高尾だが、やはり夏美がいないと何だか物足りない気がしていた。
(…夏美ちゃん、俺、あん時告ろうとしたけど、後で大切な事忘れてんのに気付いたぜ。それに直接言いたいんだ。もう空いてる日ねーし、野暮だけど修旅で呼び出すしかねーか。)
そうして時間は過ぎて行き一週間近くもある修学旅行を迎える。
ーー成田空港に秀徳2年生全員と付き添いの先生がぞろぞろと集合し、手続きを済ませて飛行機へ乗る。
夏美は勿論真ん中の列の3人席に愛と優とで仲睦まじく座っている。真理子は別の仲良い女友達と2人席に座り夏美達とは遠く離れていた。
シンガポールまでは約8時間あるため、夏美はDVDを見ながらいつの間にか眠っていた。夏美が完璧に眠っているのを愛が確認すると隣にいる優に内緒話をし始める。
「…ねぇ、真理子最近大人しいよね?何か嫌な予感がする。」
「ね!あたしもそれ思ってたんだ。高尾君の事やっと諦めついたとか?」
「え!でも真理子、夏美の事最初から気に食わなそうだったじゃん。」
「そうだね。あいつプライド高いからそう簡単には諦めなさそうだもんなー。」
2人はこれが気鬱に終わって欲しい、そう思いながら一緒のタイミングでうなづいていた。