第8章 お前ら、人事を尽くすのだよ!
「え、ちょっ!夏美ちゃん!?」
(超恥じぃーんだけど!?)
夏美に頭をいきなり撫でられて高尾は当然驚き赤面してあたふたする。
だけど夏美は恥ずかしがる高尾が可愛く思えて、わしゃわしゃと撫で続けた。
「ふふ、よしよし。あたし、もうその事は気にしてないよ。」
「え、まじ!?」
高尾は頭を下げたまま目を見開く。
「うん。だから、顔上げて。」
夏美が頭を撫でるのをやめると高尾はさっと顔を上げて夏美の顔を見る。夏美は高尾に優しく微笑む。
ちょうど電灯に当たったため表情がよくわかり、高尾は一目惚れした時のように彼女に見惚れた。
「人の受け売りなんだけどね、あたし、これからは自分と高尾君を信じて、物事をみたり行動しようと思ってるの。」
「…え、じゃあ許してくれるのか?」
「うん。何があったのかはわからないけど、過去は過去でしょ?あたしは今の高尾君を信じるよ。」
「…夏美ちゃん。」
(夏美ちゃん、マジで優しすぎる。もう、お前以外なんて考えられねぇよ。)
高尾は思わず心にジーンときて、目を見開き口は半開きになる。夏美は目を俯いて控えめに言った。
「…それに、あたしだってお兄ちゃんの事あったし、お互い様だよね。」
(あの時は本当に我儘だったよね。貴方に言われなきゃ自覚してるつもりで終わってたよ。)
俯く彼女に高尾は子供をあやすように頭を撫でて優しく言う。
「いや今思うと、去年で決着ついてよかったと思うぜ。それに、大坪さん達だけじゃなくて、辰也さんやお前にとってもあの一瞬が同じくらい大事だったんだろ?もう、今は充分俺達のことサポートしてくれてるからそれでいいんだ。」
「高尾君…。うん、ありがと。」
(どうして、そんなに優しいの?悪いのは私なのに。もう高尾君のことが好きで好きで、堪らないよ…。)
しばらく2人は見つめあい、別れを名残惜しく思っている。
(もう、ここで告っちまおうか…。もう可愛すぎてたまんねぇ。)
けどその瞬間夏美の母親が出迎えてきたので、高尾は深々と頭を下げ挨拶をして別れを余儀無くされてしまった。